芸能人の恋人や妻になる「一般女性」って、一体どんな人?

週刊誌やワイドショーすら多くは語らない、ヴェールに包まれた“芸能人の彼女“たち。

世間に名をとどろかせる男とどこで出会い、どうやって恋愛に発展させるのか…。

それは、1%の奇跡と、99%の必然。

彼女たちには、芸能人から愛される”理由“があるのだ。

そんな謎めいた女たちの、知られざる素顔に迫る!

▶前回:あえて“全ゴチする”!?狙った男を確実に落とす美女の驚きの戦略



自室にこもって仕事をする夫のため、コーヒーを淹れる朝。

昨今リモートワークが主流となりつつあるが、IT企業経営者である夫の生活ペースは以前とあまり変わらない。

ー今日はカフェでお茶でもしようかな…。

地上38階から望む雲一つない秋晴れの空をみながら、私はそんなことを考えていた。

『今日のゲストは、天才的な演技力を誇る実力派俳優、本田詩(ウタ)さんです!』

つけっぱなしのテレビから流れてきた、聞き馴染みのある名前に思わず振り返る。

どうやら、今日から公開される映画の番宣コーナーらしい。

ぎこちない笑顔で、必死に言葉を選びながら司会者と話す端正な横顔は、あの頃と何も変わっていない。

―詩くんも、33歳かぁ。トーク番組苦手なのに、頑張ってるな…。

テレビの画面に大きく映し出された彼の姿に、チクリと胸が痛んだ。

「…香澄?」

「わっ!」

突然背後から声を掛けられ、私は素っ頓狂な声を上げる。

「あ、ごめん…驚かせちゃった?俺、今からちょっと打ち合わせで出なくちゃいけなくて。夕飯までには帰ってくるから、夜はイタリアンにでも行こうか」

「うん!いってらっしゃい」

優しい夫の背中を見送ってから、再びテレビに視線を戻した。

青白く陶器のように綺麗な肌、艶やかな黒髪、大きな瞳を縁どる長い睫毛、細い首筋。

あれから2年も経つのに、彼はあの頃のまま。

―詩くん…。

夫に渡しそびれたコーヒーが、手の中でどんどん冷めていくのを感じた。


テレビの向こうの俳優に思いを馳せる、この女性の正体は一体…?



5年前の2015年9月。

あの頃私は、新卒で入社したアパレル企業で働く24歳だった。

六本木のフレンチ『エクアトゥール』で、私は“藤原さん”と食事を共にしていた。

藤原さんは有名ECサイトの運営会社を経営しており、今日のように予約が取れない店や隠れた名店に時々私を誘ってくれる。

高身長とハーフ系の顔立ちが男性から好まれるらしく、経営者が集まるパーティーや食事会にはよく呼ばれる。そのため、経営者関係の人脈は広い。

「そういえばさ、前に香澄ちゃんがオススメしてくれた俳優の本田詩さん。うちが出す新しいフリマアプリのイメージキャラクター、彼で年契決まりそうだよ」

―来た!

私は喜びのあまり大きな声を上げそうになったが、そこはぐっと堪えて「そうなんだ、良かった」とだけ呟いた。

その頃、私はジワジワと人気が出始めた実力派俳優の本田詩(28)にハマっていた。

長身瘦躯に色白で、彫刻のように整った顔立ちの、いわゆるイケメン俳優だ。しかし、他の俳優とは一線を画す、独特な雰囲気と圧倒的な演技力を彼は有していた。

決して主役級の役ではなかったが、彼のドラマを初めてみた時、その迫真の演技に涙が止まらなくなった。

それまでの私は、念願のアパレル企業に入社したものの、志望していた商品開発部ではなく、人事部に配属され鬱々とした日々を過ごしていた。

人事部なんて、どこの会社でも代わり映えしないような業務ばかり。同期からは「人事部は会社の顔だから美人な香澄が選ばれたんだよ」なんて慰められていたが、モチベーションは下がる一方。

日々の鬱憤を晴らすかのように、仲の良い経営者と毎日のように飲み歩き、会社のことをずっと愚痴っていた。みんな「うちに来れば?」と言ってくれていたので、真剣に転職も考えていた。

そんな最中にたまたま見たドラマで、私は初めて本田詩の存在を知った。彼の演技は、私のすさんだ心を救ってくれたのだ。



彼のファンになってからは、何だか仕事も苦ではなくなり「早く帰ってドラマの続きを見よう」と思い、与えられた業務を素早くバリバリとこなすようになった。

気が付けば“人事部期待の新人”なんて言われ、様々な業務を任せてもらえるようにもなった。信頼されると悪い気はせず、「もうちょっとここで頑張ってみよう」と思えるまでに意識が変化していた。

―私の人生を変えてくれた彼に、一目会いたい…!

いつしか、そんな思いを抱くようになった。

私は彼と出会う方法を考え、自分が持つ経営者の人脈を生かすことを真っ先に思いついた。

―経営者って芸能人と繋がりがある人も多いから、本田詩のファンだってアピールしとけば、いつか飲み会とかに呼んでもらえるんじゃ…


経営者の繋がりで会おうと試みた香澄だったが思うようにいかず、彼女が考えついた名案とは?

しかし、想像以上に本田詩と会うまでには時間がかかった。

というのも、本田詩がそういった派手な場には一切顔を出さないタイプの俳優で、何の情報も入ってこなかったからだ。

彼の所属する個人事務所の社長まで紹介してもらったのに、「俺ですらアイツの私生活はよくわからない」と言われる始末。

本田詩に会うことは無理なんだ、と諦めかけていたとき……。

先の藤原さんが、“新サービスの広告塔を探している”という話をポロッと出してきたのだ。

そこで私は藤原さんに本田詩をごり押しして、採用されたという訳だ。

「ねえ、藤原さん。私、本田詩に会ってみたいな。教えてあげたの私なんだし…いいでしょ?」

「確かに香澄ちゃんのおかげかもね。お願いしてみるよ」という返事を聞いて、私は心の中でガッツポーズをした。

そして、約束通り、藤原さんは「打ち上げ」と称して会員制の高級寿司店へ彼を招待し、そこに私を呼んでくれたのだ。



本物の本田詩を前に、私は感動で何も言葉が出なかった。

今までそれなりに有名な経営者とも顔を合わせてきたが、臆することなんて一度もなかったのに…。

「わ、私…本田さんのおかげで……人生が、明るくなりました」

それが、やっとの思いで出た言葉だった。

開口一番にしては重過ぎるだろ、と思ったが、時既に遅し。

自分の発言に恥ずかしくなり、うつむく。せっかく本田詩に会えたのに…と悲しい気持ちになった。

しかし。

「…嬉しいです。そんなふうに言ってもらえるの、初めてです。役者やってて、良かったなって、今、思いました」

ぱっと顔を上げると、彼は照れたようにぎこちなく笑っている。その瞬間、私は心臓が押し潰れるほどのときめきを感じた。

その後、彼と連絡先を交換することに成功し、2週間後、思い切って彼を食事に誘い出した。

前回は緊張であまりアプローチができなかったが、今回は少し責めてみようと思い胸元が空いたセクシーなワンピースを着ていった。

こんなもので彼の気持ちを射止められるとは思っていないが、自分の武器は最大限利用していきたい。

カウンターが用意された個室の鉄板焼き屋で、彼の隣に腰掛ける。すると「目のやり場に困りますね」と、彼はまたもやぎこちなく笑っていた。

イメージしていた芸能人とは違う朴訥な本田詩の姿にどんどん惹かれていく一方で、彼と会うようになってから半年経っても、進展しない関係にやきもきしていた。

そして、しびれを切らした私は「付き合ってくれなきゃ、もう会いません」ととうとう賭けに出て、半ば無理矢理彼と交際することに成功した。

それからしばらくは、人生の中で最も幸福な時間を過ごしていたのかもしれない。

彼が出演する作品を一緒に観て、彼の演技を褒めちぎったり、台本の読み合わせに付き合ったり…。

ところが、付き合って半年ほどすると、不協和音が生じ始めた。


真面目な本田詩に、少しずつ異変があらわれるも、どんどん惹かれていく香澄は…

繊細過ぎる彼にとって、芸能界は生きづらい場所だったらしく……。

芝居を誰よりも愛していたけれど、その反面「辛い」「辞めたい」と漏らし、私に当たり散らすときもあった。

思えばこの頃から、私は彼に依存し始めていたのかもしれない。そんな私に、彼も甘えて、ひどい言葉を浴びさせられることもあった。彼の研ぎ澄まされた感性に惹かれる部分もありながら、狂気を感じることもあり、つらい日々が続いた。

それでも、そんな彼を支えたくて私も必死だった。彼を支えることができるのは、私だけ、それが私が唯一保っていたプライドだったかもしれない。

一方で、彼は仕事の幅が広がり、どんどん忙しくなり、私との時間を作れなくなっていた。一旦クランクインすると、芝居に集中したいからと数ヶ月全く会えなくなることもあった。

彼と会えない時間は、あまりにも辛く私は精神的に不安定になり、仕事も休みがちになっていった。

そしてとうとう、ロケ先から久々に電話をかけてきてくれた彼を、私は一方的に責めてしまった。

「もう私のこと嫌いなんだ。飽きちゃったんだ」

「詩くんは、私より芝居のほうが好きだもんね」

「私には詩くんしかいないのに」

何か言いかけた彼の言葉を遮り「さよなら」とだけ言って電話を切り、そのまま着信拒否をしてLINEをブロックした。

2年ほどの付き合いに幕を閉じた瞬間だった。




あの頃の私は、酷く子どもだった。

仕事に向き合う彼の思いを、全く理解してあげられなかった。彼の芝居に、人生を変えてもらった1人だというのに。

彼と別れてからは何も手につかず、1ヶ月後には仕事も辞めた。

仕事を辞めてフラフラしていたときに出会った今の夫は、そんなどん底から私を救ってくれた。食事や買い物、旅行に連れ出し、沢山の愛情を注いでくれた。

今は、誰もが羨む優しい夫と、それなりに裕福で幸せな結婚生活を送っている。

でも。

―詩くんに、会いたい。

もう一度だけでいい。彼に会って、あの頃のことを謝りたい。そして、本当は今でもあなただけが好きだと伝えたい……。

テレビの向こうで笑う彼を見つめながら、私は冷めきったコーヒーを無感情に飲み干した。

―必ず会いに行くから、待っててね…。

私はスマホを手に取り、LINEのトーク画面で彼とのルームを探していた。


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