愛しすぎるが故に、相手の全てを独占したい。

最初はほんの少しのつもりだったのに、気付いた頃には過剰になっていく“束縛”。

―行動も、人間関係の自由もすべて奪い、心をも縛りつけてしまいたい。

そんな男に翻弄され、深い闇へと堕ちていった女は…?

◆これまでのあらすじ

亮と過ごす時間を確保するために、夢中で取り組んできた仕事を辞めた詩乃。一応フリーランスとして働き始めたが、彼との予定を優先するあまり、仕事に身が入らない日々が続いていた。

▶前回:「誰を愛そうと私の勝手だから」束縛彼氏にハマった女がした、ありえない選択



相良亮「詩乃、どうしちゃったの…?」


「ねえ、亮?」

リビングのソファに腰掛けた詩乃が、甘い猫なで声ですり寄ってきた。

潤んだ目でジッと見つめられると「早く、その腕で抱きしめて」とねだられているような気持ちになる。亮は仕方なく、詩乃のことをギュッと抱きしめ返す。

すると抱きしめた瞬間に、なんだか違和感をおぼえた。

「…あれ。詩乃、なんか痩せたんじゃない?」

パッと腕を離し、詩乃の顔を覗き込む。すると詩乃は、頬を赤らめながらこう答えたのだ。

「亮に愛されてるっていうだけで、お腹がいっぱいになっちゃって♡最近はあんまり、ご飯食べてないかも」

―えっ、ウソだろ。

仕事を辞めてから詩乃はみるみる痩せていき、体重は3か月で5キロほど落ちたらしい。そう言われてみれば、頬は痩せこけて顔色も悪く、髪にも栄養がなくてパサパサとしている。

決して美人ではないが、健康的でかわいらしかった頃の詩乃の面影は、もうどこにもなかった。

そんな詩乃のことを、最近なんだか気味悪く感じる。しかし、亮の気持ちの変化に詩乃は気付いていないようで、日に日に「好き」だの「会いたい」だの、連絡の頻度は増す一方なのだ。

その様子にうんざりしていたある日、詩乃の口からありえない発言が飛び出してきたのだった。

「あのね?お願いがあるんだけど…」


詩乃が言い出した、とんでもないお願いとは…?

「あのね。亮にはもっと、私の全てを把握しておいてほしいの」

詩乃は感情の読み取れない真っ黒な目をして、そう言ってきたのだ。

「…どういうことかな?俺は今でも、十分に詩乃のことを知っているつもりだよ」

「でもそれは、私がLINEで報告した分だけでしょ?違うの、そうじゃないの!もっと、24時間365日、私がどこにいるのかを把握しておいてほしいの」

「つまり…?」

「私ね、位置情報を管理できるアプリをインストールしたの。このアプリに登録してくれたら、いつでも私の居場所を知ることができるんだよ」

詩乃は、絶句する亮の様子に気付くことなく、ニッコリ笑ってこう続ける。

「もちろん登録するのは私だけで、亮がどこにいるのかは私には分からないから安心してね?…こうすれば、もっともっと私のことを管理しやすくなるから」

詩乃は、「名案でしょ?」とでも言いたげな顔で、堂々と話してくる。しかし口元こそ笑っているが、目は完全に感情を失っていた。

―え、怖っ。今、ここで断ったら何をされるか分からないな…。

様子のおかしい詩乃の姿が恐ろしくなり、亮は慌ててアプリをダウンロードしたのだった。



ここまできてようやく、亮は出会った頃からの彼女の変貌ぶりに気付いて、ゾッとした。

そういえば、ここ最近は詩乃が「会いたい」と言ったら自分が予定をあけて、彼女と会っている。

少し前まではなんでも言うことを聞いてくれ、自分好みに仕上がってきていたはずの詩乃。しかし、今はそんな詩乃にコントロールされているのだ。

それは詩乃が仕事を辞めてからというもの、日々のほとんどを、2人で過ごす時間に捧げるようになったからだ。

詩乃に違和感を抱き始めたのは、およそ3か月前のこと。

「あのね、私、仕事辞めてきたよ!!」

家にやって来るなり、そう言って飛びついてきた詩乃に、亮は心底驚いた。

「えっ、ウソでしょ…?」

確かに「仕事を辞めて、俺のことを考える時間をもっと増やしてよ」とは言った。ただ、その冗談を詩乃が本気にするとは思ってもいなかったのだ。

これまで、詩乃をうまくコントロールしておけば、自分にとって都合のいい関係性を続けられると思っていた。

しかし詩乃が仕事を辞め、ここまで自分にハマられるとなると、話は違う。

さすがに「この子と付き合い続けるのはマズいかも…」と思い始めた亮は、詩乃との距離をジワジワ離していこうと考えたのだ。

…しかし現実はそう、うまくはいかなかった。

「あ、もしもし亮?今から会えないかな?仕事中なんだけど、どうしても亮に会いたくて。作業中断して、亮のマンション前まで来ちゃった♡」

「…ハッ?」

亮の気持ちとは裏腹に、詩乃はこんな調子で突然仕事を放り出し「今すぐ会いたい」と言うことが多くなっていった。

「いやさすがに今からは無理だよ、仕事中だからまた今度にして」

亮はあくまで“自分の方が、立場は上”ということを認識させたくて、なるべく冷たく聞こえる声を出して言ったつもりだった。

「そうだよね、急にごめんね。どうしても会いたかったから。じゃあ亮の仕事が終わるまで、マンション前で待ってるね」

少し前の詩乃なら絶対にしなかったような発言。けれどこの日、詩乃は本当に何時間もマンションの前で、亮のことを待っていたのだ。


詩乃の異常な行動に、亮は…?

「詩乃、本当にずっと待ってたの?」

会食を終えた亮がタクシーから降りると、マンションの前でたたずむ詩乃を見つけた。

「うん、待ってた!でも、亮がいつ帰ってくるかなあ?って待ってるのは全然苦じゃなかったよ」

そう言ってニコニコ笑う、詩乃の笑顔が怖かった。だからそれ以来、詩乃の位置情報が分かるアプリは開かないようにしていた。

また詩乃がマンションの前にいたりしたら、仕事に集中できない。それにそもそも、亮自身が詩乃への関心を失っていた。

もう、詩乃がどこで誰と何をしていようと、全く興味がないのだ。

詩乃もそのことを察しているからこそ、余計に亮にしがみついてこようとしている気がする。

―もう、潮時だな。

亮はスマホを取り出すと、詩乃にあるメッセージを送った。






宮崎詩乃「ねえ、亮。どういうこと…?」


「今日、19:00に青山の『ベポカ』に来てくれる?」

―亮から食事に誘ってくれるなんて、珍しいな。嬉しい!

亮から久しぶりに届いた、デートの誘い。

詩乃は19時になるのが待ちきれず、夕方には支度を終えて、1時間も前から『ベポカ』の前で亮のことを待っていた。

そして約束の19時になる、少し前のこと。まだかまだかと亮のことを待っていると、遠くから亮が歩いてくるのが見えた。

詩乃は嬉しくなって、亮が歩いてくる方向へ走り出す。けれど、数歩進んで立ち止まった。

「亮…?なんで?」

亮の隣には、モデルのようなスラッと美しい女がいた。渋谷で会ったときとは違う女のようだが、あのときと同じように亮に腕を絡めている。

ただ、あのときと決定的に違うのは、絡まった女の腕がなかなか離れないことだ。

「ねえ、亮?どういうこと…?」

詩乃は目の前で起こっていることが信じられず、ぼんやりとした頭をなんとか働かせて聞いた。

「この通りだよ。俺、これから詩乃とじゃなくて、この子と付き合うことにしたから。詩乃はもう別れてほしいんだ。一方的に申し訳ないけど、そういうことだから。それで今日呼び出したんだ」

亮は「じゃあ」と言うと、そのまま女をエスコートして店の中へと消えていった。

詩乃は、その後ろ姿を茫然と見つめることしかできなかった。


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亮にフラれた詩乃は、まさかの行動に出る…?


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