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これは国税庁の『統計年報』から推計する、日本で年収が1億を超える人の割合だ。

彼ら“ミリオネア”に出会える可能性はかなりレアだが、その男たちを射止めた女たちは実際に存在する。

それは一体どんな人物なのか?その生態を探ってみよう。

▶前回:38歳の妻がとった、1本の電話…。年収2億円「27歳年上夫」との空虚な生活とは



【一緒にミリオネアに成り上がった女】
名前:梓
年齢:36歳
職業:美容用品輸入商社経営
夫の職業:建設会社代表(創業者)


結局幸せな結婚を掴むには、見る目を養う他ないと思う


「俺、絶対梓に苦労はさせないように成功するから。結婚しよう」

梓が初めてプロポーズされたのは、20歳の頃。

これを言われて嬉しくない女はいない。

しかし、梓は素直に喜べなかった。

今でこそ、それなりに名が知れている会社の代表をしている賢一だが、当時は、イギリスで語学学生をしていたからだ。

大学ではなく、語学学校。

この時点で結婚相手としてマイナス点だと感じる人は少なくないだろう。

「まだ、やりたいことがあるし学生だし。もう少し先じゃダメかな…?」

梓が優しくそう伝えると、賢一は分かったとだけ答えたが、目の奥は怒っているようにも見えた。

だが梓は彼と出会った時から決めていた。

大学を卒業したら、結婚をすると。

梓は昔から野心があった。もっと“上にいきたい”と。

だからこそ愛だけではなく、学歴や家柄などの条件も大事だと考えていたが、それ以上に重視していたのが…。

伸びしろ、これに尽きる。

そう信じていた梓は彼の人生を軌道に乗せることに成功し、24歳の時に結婚した。

一体どんな“伸びしろ”を彼に感じたのか?


ミリオネア妻から学ぶ。人の何を見るべきなのか・・・?

伸びしろがある男との出会い


賢一と出会ったのは、梓がイギリスへ留学していた大学生の頃。初めての長期休暇で日本に帰国した際、彼は実家が経営する鮨屋でアルバイトをしていたのだ。

梓の父は、東京の郊外で不動産会社や飲食店を経営しており鮨屋もそのひとつだった。

「先月からアルバイトとして入りました。石川賢一と申します」

父へ律儀に挨拶へきた賢一の第一印象は、背は高くないが、パッチリした目の好青年だった。

「よくやってくれてるって聞いたよ、頑張ってね」

はい、と爽やかに返事をした彼に悪い印象はなかった。

梓はカウンターで父と握りを食べながら、賢一の仕事ぶりをそれとなく見てみることにした。

空いたお皿をすぐ気づいては下げ、暖かいお茶をこまめに替えに回ったかと思ったら、常連客が帰りそうなタイミングで言われる前にタクシーを呼んでおく。

最後はチップまで渡されていた。

―彼、絶対伸びる。

紛れもない直感だが、これこそが交際の決め手になった。

「行きたい店がないなら、自分で作った方が早いだろ?」

ゴールドのロレックスをし、隣で大好物の赤貝の握りを食べながらそう言い放つ父。それを見て育った梓は、潜在的に稼げる男の働き方を見極める力が備わっていたのかもしれない。

そこから付き合うまでは時間こそかからなかったが、厄介な敵がいた。

―いい男には彼女がいるものだな…。

彼には同じ学部で、交際3年になる彼女がいたのだ。

それを知ったのは、「社会勉強しておきたくて」と父に伝えアルバイトとして一緒に働き始めてすぐだった。

しかし、育ちも容姿も申し分ない梓はそんなことでは怯まなかった。

梓は152センチで小柄、真っ白な肌で目が大きい。高くはないが、形のいい鼻が女性らしくてイイとよく言われる。その上、語学と音楽の才能があり、正直無敵だった。

勤務後一緒にまかないを食べながら話したり、お互いの学校の話をしたり、バイト前にお茶をしてみたり…と平凡な学生らしい距離の詰め方をしてみた。

そして思惑通り、長期休暇の帰国前日に賢一は彼女と別れ、梓を選んでくれた。

だが遠距離恋愛が始まったかと思った矢先、まさかの事件が起きたのだ。

「俺、大学やめてイギリスの語学学校に行く。広い世界が見たい」

そう言い大学を辞め、賢一はイギリスにやってきた。

その上部屋を借りることもせず、梓のところに転がり込んでくる始末。だがそんな賢一を、梓は責めなかった。



―朱に交われば赤くなる。

このことわざは本当だった。彼は経営者の父を持つ梓と付き合い、感化されていた。

そして親の目がない遠い国での恋人との生活は、とにかく幸せだった。


見知らぬ人からの1本の電話、その内容とは

だがそんな甘ったるい生活は、長くは続かない。

バイヤーになりたいという夢があり勉強に励む梓と、ただ広い世界を見て大きな人間になりたいという賢一の生活は、プライオリティーがまず違う。

それに、日本人クラスメートと大分親しくなったようで、家に帰ってこない日が度々あった。

―まだ関係性を修復するのも、彼の将来の軌道修正も間に合う…!

「就職して。それでなければ別れる」

率直に伝えた末、激しい口論になった。だが別れより帰国を決意した賢一も、どこか自分の将来を不安に感じていたのかもしれない。

2週間後賢一は帰国し、アルバイト先の常連客だった建設会社会長の鞄持ちを始めた。

彼は、有能な人の近くで学ぶ、という決断をしたのだ。

こうして24歳の時無事結婚したが、結婚生活はやはり甘くはなかった。


成り上がりミリオネアは自由な分悩みが尽きない


「義母が本当に口うるさいんです」

長男の学校に書類を渡しに来たとき、偶然時間が一緒だった、お受験塾のママ友が話しかけてくる。

資産家の親を持つ夫と結婚したので、彼女は会う度にそんなことを漏らしがちである。

適当に相槌を打ち、タクシーを捕まえ乗り込んだ。

車中で先ほど聞いた悩みを思い返していたが、梓には一切ない悩みの類だった。

なぜなら、夫は至って普通のサラリーマン家庭で育っているので、義理の両親にうるさく言われることはないからだ。

だが、その倍以上悩みの種はあるものだ。



悩みのタネは数えるとキリがないが、1番大きかったのは賢一の会社を軌道に乗せるまでのことだった。

結婚してすぐ独立した賢一の会社に梓も勤め、二人三脚で事業をしたのだ。

一気に生活は苦しくなったが夢を一緒に見るのは、楽しかった。

これでもかという位、頭は下げたし悔しくて眠れない日もあった。また入社した社員に見限られ、梓が追いかけたこともあった。

それでも梓の人脈と明るさ、そして賢一の懸命さでどんどん会社は大きくなったのだ。

この時の支えのおかげか、夫は女遊びをしない(梓にバレていないだけかもしれないが)。

しかし、この時の激務の代償は大きく、健康優良児だった梓は体調を崩しがちになった。

それに夫は家事を一切しない。

当然だが会食や社員との食事等で帰りも遅く、平日自宅で食事をとることはほとんど皆無だ。

洗濯物もカゴに入れると仕上がってくると思っているらしく、裏返しのままでポケットのごみも出さない。何回か頼んでも直らないのでもう諦めた。

そして何より、一番の悩みは変わってしまった夫婦の関係だ。

あんなに仲睦まじかったイギリス時代から、2人目が出来るまではなんとか男女でいられたのだが、やはり夫婦生活と男女でいることの相性は悪い。

それを感じ、梓は独立し自分で会社を始めたのだが、既に遅かったのだ。

―最後に男女でいられたのはいつだったかな。

『今日楽しみにしているね』

iPhoneの通知が目に入り、無意識に口角が上がる。

この男からLINEが来る時、気持ちが浮き立つのを自分でも感じるのだ。

取引先の社長で、月2回位ランチをしていて、今日はその日。

落ち着いた口調と低い声で話す彼に、会う度に惹かれている実感がある。

―もう何年も、賢一にこの感情を抱いていないな。

悲しく思うこともあったが、ここ1年くらいはふっきれている。

そう思えるのは、結婚したことに後悔は一切ないと感じているからなのか、彼にひっそりと恋心を抱いているせいかは分からないけれど。

一緒に“ミリオネア”になれたことを誇りに思っているし、恋は恋で楽しい。結婚とはこういうものだ。

男の伸びしろを見抜けずに条件ばかりで人を見て、無難な2,000万程度の年収の男と結婚し、専業主婦なんてダサい。

―一緒にミリオネアになった夫もいて仕事もあって、恋もしている。

常識とはかけ離れているかもしれないが、これが梓の生活だ。


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お食事会やコリドーなんて古すぎる。アプリでミリオネアを射止めた女。