なぜ“山田”という男は、「見た目平均以下」の冴えない男だったのに、注目の若手起業家としての成功を手に入れたのか…?

その“謎”を解く。

▶前回:彼の見た目は、“45点”。それでも美女が「この人と一緒にいたい」と結婚を決めた理由



原動力は、怒り


人間の原動力ってなんだと思います?

憧れ、恐怖、欲望、怒り..。

僕の場合、すべての始まりは「怒り」だったのかもしれない。

僕は茨城県の片田舎、地元のメーカーで働く父と、スーパーのパートで働く母の元で育ちました。

お金持ちでもなければ、ものすごく貧乏でもない。平凡な中流家庭だったけど、幸せでした。

…でもある出来事で、我が家の幸せが崩れ去ったんです。

あれがなければ、僕はまだ茨城にいたかもしれない。高校を卒業してすぐ結婚して、子供と一緒に、のんびりと暮らしていたかもしれない。周りから「山田のくせに」なんて言われずに。

あの出来事は、僕が高校にあがってすぐ、父親が定年退職をした年のこと。

「退職金で不動産投資を始めようと思う」

父がそう、言い出したんです。


不動産投資を持ちかけられた山田の父に起きた悲劇

父に話を持ち込んだ相手は、東京から来た男。

たまたま仕事で茨城に来ていたというその男に、父はお気に入りのスナックで出会ったそうです。



その男は父曰く「不動産会社の社長で話が上手。過去に大手証券会社で投資の仕事をしていたから、投資に関してはスペシャリスト」と言っていたそうです。

そしてその男は、定年を迎えるにあたり投資に興味のあった父にこう言った。

―将来高配当間違いなしの、絶対投資するべき新規事業がある。

“投資のスペシャリスト”から聞いて興味を持った父は、言われた額を振り込みました。

地元のメーカーでコツコツと働いてきた父は、おおよそ他人を疑うことを知らなかった。だから、まんまとお金を振り込んだんです。その額、およそ5,000万。40年以上、一生懸命働いて得たお金と、さらに銀行から借り入れまでしていたんです。

なぜ真面目な父がそんなことをしたのか…。聞いたことはありませんが、このまま平凡な人生で終わりたくないと少し魔が差してしまったのでしょうか。

その先は、予想がつきますよね。

振り込んだ後、突如その男とは連絡が取れなくなり、その会社をよく調べたら架空のものであることが分かりました。巧妙な詐欺。

あれ以来、生活が一気に苦しくなり、僕も母も、バイトのシフトを増やすようになりました。家族全員で必死にその男を探し回ったけれど、見つかるはずもなく...。

だからあの時、僕は決めたんです。

いつかアイツをぎゃふんと言わせてやるくらい稼いで、家族を支えていこうと。

そして僕は高校を出たら、東京に行こうと決めました。結果早稲田大学に合格し、僕は上京した。

でも、東京に来てからは大変でした。

周りにいる奴らは皆恵まれた家庭環境で、見た目も持っているものもセンス良く相応の金がかかっている。

一方僕はダサい男だったので、基本上から目線で笑い者にされてばかり。

見た目を気にせずに接してくれた女友達と仲良くしていただけなのに「山田のくせに、エリナと仲良くするなんて、美女と野獣だ」と陰口を言われる始末。

それに皆と違って何のバックボーンも持たない僕が稼ぐためには起業するしかないと思って学生起業したら、結果失敗して、さらにみんなに笑い者にされたんです。

「山田のくせに、経営者になんてなれるわけがない」なんて言われて。

けれどあの時、みんなに後ろ指を指されたからこそ、今また経営者になろうと思ったんです。今度は絶対に失敗しない、と。

それからは寝る暇も惜しんで働きました。起業してから数年は1日も休んでません。

こうして経営者として何とか軌道に乗り、色んな人と出会うようになったんです。

…特に起業家の拓斗とは同世代で、よく顔を合わせていました。

最初から少しいけすかないやつだな、と思っていましたがその予感は見事的中して、ホームパーティではあんなことに…。

でも拓斗との出会いで、自分の信念みたいなものに気づいたんです。


拓斗との会話で気づいた、山田の信念とは

確かにあの日、拓斗はずっと狙っていた女子アナ・絢ちゃんがホームパーティに来ると、ものすごく上機嫌だった。

僕はたまたま隣に座ってきた絢ちゃんと、二人で少し会話していたんです。

恐らくそれが気にくわなかったんでしょう。拓斗は大声で、起業家の先輩の失敗話をダシに、絢ちゃんに話を振るようになったんです。

途中から聞いてられなくなって、ずっと一点を見つめてましたね。そしたらそれに気づいたのか、拓斗が僕の方を見ながら言ったんです。

「こんなに可愛い絢ちゃんの隣に座れて、お前はいいご身分になったよなぁ。茨城でバイト三昧だった、山田のくせに」

その時、僕は何も言えずに下を向いていたんです、こんなの相手にしちゃいけないと。

でも、そのあと、彼が言った一言は、先輩ではなく、僕に向けた言葉だったと思う。

「それに対して失敗したあいつは喋り方もキモいし、どこ見ても経営者に不向きな要素ばっかり。努力してもうまくいかないですよ」

自分の中で何かの糸が切れた感じがしたんです。だから咄嗟に言い返してしまったんです。

「努力している人間を、バカにするほうがダサい」

あの時、僕は気がつきました。

今までたくさんの人に、「山田のクセに」とたくさん言われて来ました。

山田のクセに経営なんて、山田のクセに恋愛なんて、山田のクセに分不相応だ、山田のくせに…。



でもそんな言葉の呪いをかけられても何とかやってこれたのは、何者でもない自分と日々まっすぐ向き合って、成長するための努力をずっと続けてきたからです。

”山田”を武装しようと美女やブランド品に目がくらんだこともあったけど、ここまで這い上がってこれたのはその努力の結果なんだと、咄嗟に出たその一言で気づきました。

そう気づかせてくれた、拓斗には感謝しています。

…そしてあの時、父を騙した男にも、僕の父にも。

父は騙されたにも関わらず、その男を特段悪く言うこともなくひたむきに仕事に取り組んで家族を支えようとしてくれました。

僕はなんで騙された男のことを憎まずにいられるか、不思議で仕方なかった。

けど、今になってあの時の父の態度の意味がわかったような気がします。

人を憎むことに執着しても意味はない、今を変えるためには、他人ではなく自分と向き合い努力するしかない、と。

執念は才能に勝るんです。

だって、そうやって努力し続けてきたから、僕は今、絢ちゃんとの結婚が決まった。彼女は僕のそういうところを認めてくれたんです。

だから、今までもこれからも、僕は外野の声なんて、聞くつもりはありません。ただ、自分と向き合い続けて成長することが僕のミッションなんです。

山田のくせに。

そう言われるたびに、心の奥底で僕はこう思います。

山田ですけど、何か。

Fin.

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