芸能人の恋人や妻になる「一般女性」って、一体どんな人?

週刊誌やワイドショーすら多くは語らない、ヴェールに包まれた“芸能人の彼女“たち。

世間に名をとどろかせる男とどこで出会い、どうやって恋愛に発展させるのか…。

それは、1%の奇跡と、99%の必然。

彼女たちには、芸能人から愛される”理由“があるのだ。

そんな謎めいた女たちの、知られざる素顔に迫る!

▶前回:「キスまでしたのに…」もう少しで付き合えると浮かれていた女が、突然彼に裏切られたワケ



『今日未明、人気男性アイドルグループ“NEEDS”のメンバー内山輝幸容疑者・24歳が、港区の路上で面識のない男性を殴ったとして、暴行罪の疑いで現行犯逮捕されました』

恋人と2人、ベッドに寝転びながら何気なく見ていた土曜朝のニュース番組。速報として流れてきた報道に、彼が「あーあ」とぼやく。

「この子、ついこの前俺がやってる番組にもゲストで出てくれたんだけどさ、なかなか態度悪かったよ。いつか何かやらかしそうな感じはしたわ。海美(うみ)もそう思わない?」

「…うーん、どうだろ。私は一般人だから分からないな」

私の恋人は、人気番組を多数手がけるプロデューサー。広告代理店で働く29歳の私は、数ヶ月前に仕事関係の食事会で35歳の彼と知り合い、猛アタックされた末に付き合うことになった。

「最近ほんと多いよなぁ、若手の不祥事。勘弁してほしいよ」

私はやや不機嫌そうな彼にそっと寄り添い、ぽつりと呟いた。

「…若い頃からチヤホヤされると、勘違いしちゃうのかもね」

私はテレビに視線を戻す。そこには、複数名の警察官に囲まれながら、俯き加減で車に乗り込む男性の姿が映し出されていた。

明るい茶髪に、白い肌。マスクで顔はほぼ覆われているが、長い睫毛に縁どられた鋭い眼差しは“あの頃”の彼のままだった。

―テルくん…。

私は、彼をよく知っている。もう何年も前から、ずっと。

だって彼と私は、3年前まで恋人同士だったのだから…。


有名人の逮捕報道を恋人と共に見る、この女性の正体とは…?

私が芸能人と繋がりを持ち始めたのは、大学2年生の頃。

当時ファンだった若手俳優Aに出会いたい一心で、彼が在籍していると言われていた大学の国際政治経済学部に入学した。なかなか大学に姿を現さない俳優Aだったが、彼の友人と同じイベントサークルに入って親交を深め、その友人の紹介でその俳優Aまでたどり着くことに成功した。

しかし、俳優Aには当時交際中のタレントがいたため、私は見向きもされなかった。

それでも私はめげず、俳優Aのことは友人として接するようにした。そして俳優Aに芸能関係者との飲み会を開催してもらい、他の芸能人と繋がることに精を出した。紹介してもらった芸能人と仲良くなり、その芸能人から別の芸能人を紹介してもらい、またその芸能人から…といったように、業界内で“数珠繋ぎ”をしていった。

芸能人と知り合ってどうなりたいわけでもなかったが、人生経験豊富でトーク上手な彼らとの飲み会は刺激的で面白かった。

ミーハーな私は、「芸能人と仲良し」というステータスを手に入れられるだけでも十分だったのだ。幸い、王道アイドル系の万人受けする顔立ちだったし、大学生でフットワークも軽かったので、とにかく色々な飲み会に声を掛けてもらえた。サバサバした性格や、歯に衣着せぬ発言、一切物怖じしない態度なども、芸能関係の人達からはウケが良かったらしい。

でも、絶対に誰とも“男女の関係にはならない”。それが私のポリシーだった。

特定の誰かと関係を持ってしまうと、飲み会に誘われにくくなることが分かっていたから。

一晩で4〜5件飲み会をハシゴして、翌日大学をサボるような日も多々あったが、そうやって少し無理をしつつも着々と業界内で人脈を広げていった。

そして、そんな生活は社会人になってからも変わらなかった。

むしろ、広告代理店に入社したことによって“業界関係者”として声を掛けられる機会が増えた。私は経理部所属なので、正確には業界関係者ではないのだが…。

結果、知り合いたかった芸能人ほぼ全員と繋がりを持ち、いよいよ会いたい人もいなくなってきた頃。久々に、私の琴線に触れる人を深夜の音楽番組で発見した。

―NEEDSの、内山輝幸…19歳。まだ若いのに、超イケメン。パフォーマンスもグループ内で断トツだし、将来有望って感じ。

初めて“テルくん”を見つけたのは、2016年2月。私が社会人2年目、24歳の時だった。私は、彼を次のターゲットに決めた。



テルくんは若かったし、デビューしたてのド新人。彼と同じ事務所に知り合いはいたが、皆、未成年のメンバーを飲みの場に呼ぶことは流石にしないようだった。

考えようによっては、むしろ好都合だった。

飲み会経由じゃなく、私個人でこっそり彼と繋がれたら、もし付き合ったとしても、周りから変に気を使われて飲み会に呼ばれなくなることもないだろうし…。

そう思い立った私は、アイドルグループ「NEEDS」のライブを予約し、そのライブ後に楽屋口付近で出待ちをすることに決めた。

新宿区、某ライブ会場。

ド新人とは言っても、人気男性アイドルが多数所属する大手事務所のグループ。注目度は高いようで、出待ちの数もそれなりに多い。

あえて楽屋口から一番遠くで待機し、テルくんが出てくるのを待つ。

まだ肌寒い季節だったが、彼に会うためだと自分に言い聞かせ、ホッカイロを握りしめ耐えていた。

待ち始めてから30分が経過した頃、メンバーが続々と楽屋口から出てくるのが見えた。

しかし、私は駆け寄ったりせず、そのまま遠くのほうでひっそりと佇み、テルくんが他の出待ち対応を終えるのを待った。

ようやくテルくんがこちらに向かって歩いてくるのが分かったので、私はすかさず彼を呼び止める。

「あ、あの…内山輝幸くん。これ、良かったらどうぞ」

私は、コンビニで買った“フリスク”を1つ差し出す。彼は「どうも…」と言ってそれを受け取った。

そして。

「……え?」

渡したフリスクを見て、彼は驚いたような表情を見せた。


テルくんが手渡されたフリスクを見て、驚いたワケとは…?

そのフリスクには、私のLINE IDを記載した紙を貼り付けていた。

ちゃんとしたプレゼントは事務所に中身を確認され捨てられるかもしれないし、ダラダラとした手紙は面倒なので読まれない可能性も高い。

メッセージカードという手もあったが、それでは連絡先を渡したのがあからさますぎて他のファンから警戒される。

そこで、フリスクを小さなプレゼントとして渡すという作戦を思いついたのだ。

「じゃあ、また」

私は彼にニコッと微笑みかけて、その場を立ち去った。



その翌日、狙い通りテルくんからLINEが届いた。とりあえず私は、初対面の印象で“アリ”の範疇に入れたようだ。

私はLINEのやり取りの中でささっとデートの日取りを決め、若い男の子が喜びそうな焼肉店『よろにく』を予約した。

19歳相手にあまり華やかすぎるファッションで行くのも微妙かと思ったので、当日はシンプルなグレーのタイトワンピースに、フルラのバッグ、華奢なシルバーのネックレスを着けて彼に会いに行った。



「こういう店に来るの初めてで、緊張します…」

当日。テルくんはパーカーにジーンズといった、質素な服装で現れた。

店内をきょろきょろと見渡し、店の高級感に動揺する素振りを見せるテルくん。今まで遊んでいた芸能人とは全く違う反応に、思わず胸がキュンとした。

彼はまだあまり有名ではないので、パパラッチされる心配はないだろうけれど。19歳の彼に合わせて、今日は私もノンアルコールだ。

「きっとこれから先輩に沢山連れて行ってもらうんじゃないかな。高木ヒデさんとか、ここ行きつけだって前に言ってたよ」

「えっ、高木さんとお知り合いなんですか?」

会話中、彼の事務所の先輩の名前をさりげなく挙げる。

芸能界内での交友関係が広いことをアピールして彼の警戒心を解くとともに、「じゃあ今度一緒にどう?」などと言って次回以降の約束を取り付けやすくするためだ。

私といると何かしらのメリットがある…まずは、それを彼に理解してもらうことが重要だ。

そして、『よろにく』での初デートを境に、私は本当に彼を様々な芸能関係者に会わせることにした。

彼の事務所の先輩や、芸能プロデューサー、人気俳優など、テルくんの仕事に良い影響をもたらしてくれそうな人を食事に誘い、そこに彼を同席させた。私はここぞとばかりに、これまで培った人脈をフル活用した。

でも私にできるのは、あくまでも食事会に彼を同席させることだけ。どこまでいっても、私と業界人との関係はただの「お友達」なので、もちろん私に彼をプッシュするような権力はない。全ては彼のアピール力にかかっている。

最初はおどおどしていたテルくんだったが、元々社交性があるためか、すぐに業界人に気に入られていった。将来有望な若手タレントを自分が育てているような感覚になり、私は得も言われぬ優越感に浸っていた。

私たちは自然と一緒にいる時間が増え、テルくんは「事務所の寮は居心地が悪い」と言って私の部屋で寝泊まりするようになった。

出待ちをしてから8ヶ月後の2016年10月頃から私たちは半同棲状態になり、その流れで無事付き合うことになった。

同時に、テルくんの人気はじわじわと上がり始め、番手の高い役で朝ドラの出演が決定したり、映画の主演に抜擢されたり、地上波でレギュラー番組を持ったりなど、グループ内で頭一つ抜きんでた売れ方をしていた。

中には、私が紹介したプロデューサーや事務所の先輩の口利きで決まった案件も多数あった。

「海美、本当に色々とありがとう。大好きだよ」

細い腕で私を抱きしめる彼に、「テルくんが頑張ってるからだよ」と囁く。2人で過ごす、幸せな時間。

ここまでは全て私の思い通りに事が進んでいた。

このままテルくんは売れ続けて、私はいつか彼と一緒になる。そんなハッピーエンドを夢みていた。

でも、現実はそう上手くはいかなかった。


作戦通りテルくんと交際を始めた海。しかし、幸せは長く続かず…

テルくんの仕事が忙しくなり始めて、彼が家に戻らない日が多くなった。

もちろん、仕事であれば仕方がないのだが、どうやら友人達と朝まで飲み歩いているらしい。12月で20歳になったばかりなのに、この状態はあまり良くないような気がしていた。

「…ねえ、テルくん。あんまり遊びすぎないほうがいいよ。いつどこで誰が見てるかわからないんだし」

朝4時頃。千鳥足で帰ってきた彼に、つい苦言を呈してしまった。すると彼は、私を鋭い眼光で睨み、怒鳴りつけた。

「海美に関係ないだろ。俺に指図してくんなよ!」

彼の言葉に驚き、私は身を硬直させた。

今までは、どこか彼を子ども扱いしていたところがあった。私の方が、いつも主導権を握っていたと思う。

でも彼が大人になり、だんだんと売れ始め、その均衡が保てなくなった。



そして、彼はいつの間にか煙草を吸い始め、ボディピアスを開け、ハイブランドを身に着けるようになった。全て、私の知らないうちにやっていたことだった。

別にそれが悪いわけではないけれど、彼がやりたくてやっていることではないような気がしていた。

誰かに影響を受けているに違いない…どこか確信めいたものが私の中にあった。

「テルくん、危ない人達と付き合ったりしてないよね?それだけは本当にやめなね。芸能界にいられなくなっちゃうよ」

「うるせぇな、何も知らない一般人のくせに!」

私が少しでも癇に障るようなことを言えば、怒鳴って部屋を出ていくようになった。

彼は、変わってしまった。もう、私が愛しく思っていた頃のテルくんではなかった。

これ以上一緒に居ても、お互いのためにならない…。そう思った私は、彼に別れを告げた。

「テルくん、さよならしよう」

2017年11月。彼と交際を始めて約1年。冬のように寒い秋の日に、彼は部屋を出ていった。



どんなに芸能人の知り合いが沢山いても、私は所詮一般人。当時の彼が抱えていた不安や、苦しみを分かってあげることはできなかった。

そして、彼をペットのように連れまわし、色んな芸能関係者に見せびらかしていい気になっていた私こそが、彼の人生を狂わせてしまった1人だったのかもしれない。

「…海美、どうした?」

恋人が、心配そうに私の顔を覗き込んでくる。私は小さく首を横に振り、「なんでもないよ」と笑った。

―テルくん、ごめんね…。

繰り返し流される、内山輝幸の逮捕報道。私は恋人の腕の中で、ニュースの一言一句を静かに聞いていた。


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