「婚活しているのに、結婚できないんです…」とぼやいている女性に物申す。

流れに身を任せてゴールにたどり着けるほど、人生は簡単じゃない。

類稀なる美貌や才能も無い人間は、頭を使ってストラテジック(戦略的)に生きていかねばならない。

あらゆる経験をデータ化し、出会った男は全てエクセルで管理。

理想の相手も、理想の人生も、欲しいモノは何だって手に入れる、ストラテジックに生きる凛子(25歳)の手練手管をご覧あれ。



「ねぇ聞いてよ。5年も同棲してた彼に30歳になった途端フラれちゃった。人生詰んだわ…」

目の前で三十路女が泣いている姿を、25歳の凛子(りんこ)は冷めた目で見つめていた。

—礼美さんったら、なんて馬鹿なのだろう。同情の余地もない

二人は同じコンサルティングファームに勤める秘書同士。礼美は5歳も年下の凛子を度々ランチに誘っては、一方的に恋愛相談をしている。

「喝を入れてもらいたい」と懇願され、丸の内にあるイタリアンに誘い出された。

フラれてから食べ物が喉を通らないという礼美は、パスタをゆっくりとフォークに絡ませながら、涙を滲ませて同情を求めてくる。

凛子はそんな礼美を見て、舌打ちしたい気分になる。

結婚適齢期である20代の黄金期を、たった一人の男に捧げて棒に振るなんてやっぱり馬鹿だ、なぜもっと“ストラテジック”(戦略的)に生きないのかと不思議に思うのだ。


人生を思い通りに操るための凛子のストラテジーがこのあと明らかに。“女のヒミツ”が隠されたPCの中身とは…?

「礼美さんはどういう人生計画だったんですか?」

「人生計画…?う〜ん、30歳までには結婚して子供産みたいなぁって思ってたけど」

受験だって就職だって数年前から対策をするのが当たり前だというのに、どうして『結婚』になった途端、計画もせずに漠然と流れに身を任せて努力を怠るのだろう。

類稀なる美貌や才能を持っているわけではない私たちのような人間は、頭を使って生きるべきだというのに。

「じゃあなんで5年間もグズグズしてたんですか?30歳までに第一子を産みたいなら26歳のうちにプロポーズされる必要があるのに…」

「そうなの…?」

「これ、見てください」

凛子はPCを開き、礼美の目の前に突き出した。

「え、なに、これ…」

礼美は画面を覗き込むや否や、目を見開き、ギョッとした顔をした。

「実は私も “30歳までに第一子出産”というゴールを設定しているので、逆算しているんです」

「な、何かのプレゼン用…?凄いクオリティのパワポね…」

礼美は目を見開いたまま身を乗り出し、PC画面を凝視した。

「妊娠期間は10ヶ月間。すぐに妊娠できるとは限らないので28歳のうちに子作りを始める必要がある。夫婦だけの生活を1年くらいは満喫したいので27歳で結婚。プロポーズから入籍まで半年かかるとすると26歳のうちにプロポーズされる必要がある。私はそのつもりで動いています」

「え、凛子ちゃん来年プロポーズされる予定があるってこと?今は誰とも付き合う気はないってこの前言ってなかった?」

「20代前半って市場価値が物凄く高いので、その時に得られるはずの恩恵を全て捨てて、一人の男性にコミットするのは無駄だと思うんです」

20代前半どころか20代後半の5年間を一人の男性にコミットし、無駄にしてしまった礼美を、凛子は心の底から気の毒に思う。



「毎日食事会をすれば単純計算で3人×365日、たった1年で1,000人以上の男性と出会うことが出来る。これまで、食事会やオンラインパーティーに捧げて、膨大なサンプルを取得しました。やっと結婚適齢期になったので、今年のクリスマス辺りから誰かとお付き合いを始めて来年プロポーズされる予定です♡」

青写真を描く凛子を見て、礼美はまるで全てを悟った人生の先輩かの如く慈悲深い眼差しを向けてきた。

「まぁでも、恋愛はそんなに計画通りにいかないものよ。私だって20代のうちにプロポーズされる予定だったのに、逆にフラれちゃったんだから…」

“30歳までに結婚して子供を産みたいなぁ〜♡”という礼美の淡い期待は、“計画”でもなんでもなく所詮ただの“願望”でしかない。

心の中で願っているだけで叶うほど、人生甘くない。

”20代までにプロポーズされる予定“だったのであれば、目標を達成するための計画を実行する必要があるのだ。

「礼美さん、プロポーズされるように仕向けました?」

「え…いや…仕向けるとか…そういう嫌らしいことはしたくなくて」

「恋愛も“PDCA”を回すべきですよ」

礼美は凛子から目をそらすように、“confidential”と書かれた怪しいタグに目をやった。

「え…、このページはなに…?」

「膨大な数なので、今まで出会った男性は全員エクセルで管理してるんです」

凛子は、名前、年齢、出身地、顔、学歴、経歴、家族構成、将来の夢、好きな女性のタイプ、元カノ遍歴、性癖など、男性のありとあらゆる情報をエクセルで管理していたのだ。

LINEパターンやデートパターン、セックスの出し惜しみまで全て検証済みで勝率まで算出してある。

結婚適齢期になった今、今まで収集したデータを元にタイプに合った攻略法を使って、あとは効率的に攻めるだけなのだ。

「はぁ…なんて戦略的なの。こんな25歳がいたら叶わないわ。私を振った彼も、別れた直後に交際3ヶ月で25歳の女と電撃婚したの。やっぱり男って若い女が好きなのよ。30なんておばさんなのよね」

—別れた直後に25歳の女と電撃婚…?

凛子の頭の中では3つの仮説が浮かんだ。その仮説が正しければ、礼美の破局は不幸中の幸いだ。


思わずムッとした礼美が笑顔になった、凛子が語る“彼女がフラれてよかった理由”とは…?

仮説1:ロリコン 仮説2:浮気性 仮説3:モラハラ

「元彼、37歳ですよね?アラフォーのくせに一回り下の女の子とサクッと結婚するなんて絶対ロリコンですよ。無事に結婚できたとしても将来確実に女子大生と不倫しますって。それに、3ヶ月で電撃婚って怪しいですね。二股していた可能性もあるのではないでしょうか」

「はぁ…、確かに…」

「それに、仮に礼美さんと別れた後に出会っていたとしても、“たった3ヶ月”で人間の中身なんて知りきれませんよ。きっと顔がドンピシャで好みだったとか、身体の相性が抜群だったとか若くて可愛いトロフィーワイフが欲しかったとかその程度でしょう」

忖度せずにズバズバと本質を突いてくる凛子に、礼美はただただ圧倒され、たじろいだ。しかし、凛子の講釈は止まらない。

「一回り年下の女の子と3ヶ月で対等な関係が築けているとは思いません。自分がイニシアチブを取りたい人間なのかもしれませんよ。もしかしたらモラハラの気があるかも…?」

「言われてみれば思い当たる節が…。同棲中、家政婦みたいに扱われていたし彼と結婚しても悲惨な未来があったかも…」

凛子に耳の痛い正論を突き付けられ、頭では理解できても、礼美は煮え切らない様子だった。

これだから女子会は嫌いだと凛子は思う。

女性は共感を求める生き物。耳触りの良い言葉でお互いの傷を舐め合い、自分の至らなさから目を背け、男を標的にして徹底的に叩き、無責任な励ましを求められる。

—こんなの不毛な時間だ。なんの解決にもならない。

「ねぇ礼美さん、女同士で愚痴っていても時間の無駄なので、一緒にお食事会に行きませんか?」

「是非!行きたい!凛子ちゃんのお食事会って質が高いってよく聞くもの」

礼美の顔がようやく華やいだ。傷心の礼美が目を輝かせてくれるレベルのカードは揃っている。

「あ、でも“お食事会”という名目ではないんですよ。いい男は所謂お食事会にノコノコ現れるほど暇じゃないですからね」



「慶應の集まりなんですけど良いですか?私、統計的にみても早稲田の男と波長が合わないことが多くて」

「え、えぇ。私も早稲田の男より慶應の方が合う気がする。なんでだろう」

「慶應の方が外れ値が少ないじゃないですか。福沢諭吉が“気品の泉源”って言っていたように、統計的に見ても紳士的な男性は多かったです」

海外の大学なのか国内の大学なのか。東大なのか京大なのか、慶應なのか早稲田なのか、一橋なのか東工大なのか。外資なのか内資なのか。GSなのかMcKなのか、商事なのか物産なのか。

“何を選ぶか”微妙な違いにその人の価値観や性格が如実に表れると凛子は考える。

それに、朱に交われば赤くなってしまうのが人の性(さが)だ。人間をカテゴライズしてしまうのは、良くないが、「傾向と対策」を知った上で戦略を練ることは必要なことだ。

「さ、涙を拭いて、楽しみましょ!」


それでは、次回は“お食事会”から…ストラテジックな凛子の世界をご覧あれ。


【本日のストラテジー】
・ゴールを明確に設定し、逆算して行動せよ
・出会った男をエクセルで管理し、自分に合う男をカテゴライズし傾向と対策をたてよ
・女子会は無駄。出会いの場へ出かけよ


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「え、わざと…?」ストラテジックな女・凛子のあっと驚くお食事会戦略とは