どうしても、忘れられない人がいる

「絶対に、もう一度彼を振り向かせる!」

そんな目標を掲げて…

“別れてしまった恋人”との復縁を願い、行動する1人の女がいた

これは、元彼との“復縁”に奮闘する、とある女性の軌跡を描いた物語である



人生初の失恋


『ピピピピッ…、ピピピピッ…』

木曜の朝7時半。

スマホのアラームが一人暮らしの部屋に鳴り響く。

ぼんやりとした意識の中、私はアラームを止めて天井を仰いだ。

普段の自分なら、すぐに部屋の明かりとテレビをつけて、仕事に行く仕度を始めるのに。今日は高熱を出したときのように、身体が重くてだるい。

とても仕事に行ける状態じゃなかった私は、上司と後輩に連絡を入れる。

社会人になってから初めての“ズル休み”だった。

―今日は……無理。

私は昨晩、1年半付き合った5歳年上の恋人・友之に別れを告げられた。

26年間生きてきて、“初めて”フラれた。

あまりにも突然のことだったうえに、別れの理由はひどく曖昧だった。

「樹里には、僕よりもっといい人がいると思う」

ひたすら、その一点張り。

その言葉が、別れを意味していることに、しばらく気づけなかった。

だって……友之よりいい人なんているわけないから。

心から神様を信じているわけではないけれど、不意に祈りたいような気持ちになった。

ー神様、彼と出会ったあの日に時間を戻してください。彼の気持ちを、私に戻してください。


彼氏に振られ失意のどん底の樹里。はたしてこの後、どのような行動に出る?

彼との出会い


友之との出会いは、2019年4月。

私が25歳で、彼が30歳のときだった。

大手芸能プロダクションでタレントのマネジメントをしている私は、その日、自分が担当している女性タレントの「山城由奈」と共に、とある大御所芸能人のバースデーパーティーに参加していた。

広大な庭園でシャンパンボトル片手にバカ騒ぎをする有名芸能人がいるかと思えば、しっぽりと仕事の話をするスーツ姿の大人達もいる独特の空間。

そのスーツ姿の大人達の輪に由奈を連れて入りこみ、ひたすら挨拶と名刺交換をして回っていた。

由奈は雑誌のモデル出身で、20歳にして芸歴は10年以上。

最近では、テレビでも引っ張りだこ。コメンテーターとして出演しても、しっかり笑いを取れるし、若いのにMCもバッチリ回せてしまう。地上波のバラエティ番組で見ない日はない。

ひと通りの挨拶が済んだところで、彼女は仲の良いモデルと一緒にインスタ用の写真を撮りに行った。それを遠巻きに見守りながら、私はソフトドリンク片手に隅のベンチで一息つく。

その時。

「お酒、飲まないんですか?」



突然声を掛けられ驚いて振り向くと、そこには長身ではっきりした顔立ちの男性が立っていた。

「私、あそこにいる山城のマネージャーで。今日は仕事の延長みたいな感じなので、お酒は控えてるんです」

そうだったんですね、とニコニコしながら、彼はサッと名刺を取り出し私に差し出してきた。

「美容整形外科医をやっております、杉原友之です。タレントさんの施術なんかも、よくやらせてもらってるんですよ」

彼は真っ白な歯を見せて、ハハハと豪快に笑う。

爽やかな彼の姿に、私は好印象を抱いた。

その日以来、お互いに忙しい合間を縫って食事に行き、3ヵ月ほどが経った頃、彼から告白され付き合うことになった。

彼との出会いは、そんなありきたりの日常の中にあった。

私が彼に惹かれた理由。それは、見た目とは裏腹に読書家で、幅広いジャンルのカルチャーに精通しているところ。

本だけではなく、映画や音楽など、恐ろしいくらいに私と趣味が一致した。彼と一緒にいると、時間が本当にあっという間だった。

こんなに楽しく語り合える男性に出会ったのは、生まれて初めてだった。

付き合って1年の記念日には、有名なグランメゾンを予約してくれた。プレゼントには、ティファニーのピアスまで用意してくれていた。

医者で、イケメンで、センスが良く、趣味も合う。最高の条件が揃った自慢の彼氏。

周りにも美男美女でお似合いだと言われていたし、この幸せがいつまでも続くものだと思っていた。

それなのに…。


友之のことがどうしても諦めきれない樹里。親友からそそのかされある決意をする?

失恋から3日目 やっぱり彼が好き…


「樹里がそんなに彼を好きだったとはね〜」

失恋して3日目の土曜日。

上智大学時代の同級生で近所に住む百花に、代官山のブックカフェに呼び出された。

失意のどん底に沈んでいた私を見るに見かねたらしく、無理やり外に連れ出されたのだが…。ここは、よく友之とも一緒に訪れていた場所で、到着するなり余計に落ち込んでしまった。

「樹里は可愛いし、モテるんだから。すぐに新しい彼氏みつかるよ!次いこ、次」

「うん……」

男がいくらでもいることは、私も頭ではよく分かっている。でも、心が全く新しい出会いを求めていない。

それに、今まで私は、男を“選ぶ側”で、いつも別れを切り出すのは自分からだった。それなのに、なぜ今回だけ彼から別れを告げられたのかも納得がいっていない。

そう…、私の中で友之との恋愛は、まだ終わってないのだ。

そんなことを悶々と考えていたとき、百花がこんなことを言ってきた。

「もしさ、新しい彼氏を見つける気がないなら、やっぱり彼を諦めちゃダメ。あらゆる手を尽くして、ヨリを戻すことを考えてみたら…?」

「それって復縁するってこと…?」

「うん、私の友達で、復縁から結婚した子とかいるよ。無理じゃないって」

「復縁から、結婚…?」



彼女の言葉は、私にとって衝撃的だった。別れたらそこで終わりだと思っていただけに、その先に結婚の可能性があるなんて想像もしていなかった。

「雨降って地固まるってやつ?すっごく幸せに暮らしてるよ」

百花に促され、私はおもむろにスマホを手に取り、『元彼 復縁』と検索をかける。

すると、想像以上に“復縁”を目指し奮闘している男女がいることがわかった。

しかも、復縁ってモテない惨めな女がするものだと思っていたが、そんなこともないようだ。

ーその気になれば、私にも、まだやり直すチャンスあるってことだよね。

急に興味が出てきて、“復縁”に関するページをいくつかクリックして読んでみた。どのページにも必ず書かれていたのは、別れた後の“冷却期間”が必要だということ。

冷却期間とは、元恋人と一切の連絡を絶つ期間のことらしい。

この冷却期間中にお互いの気持ちがリセットされ、相手に対するマイナスイメージが払拭されるそうだ。一般的に、3ヵ月ほど連絡を取らないのが適切だという。

「3ヵ月も、連絡取っちゃダメなのか…」

できれば今すぐに別れの理由をちゃんと聞きたいし、悪いところがあったなら全力で謝りたい。そして彼を力いっぱい抱きしめたい。

「3ヵ月って長いなぁ…」

私がスマホ片手に呆然としていると、百花が「あっ」と小さく声を上げた。

「そういえばさ、樹里、来週誕生日じゃん。その日までとりあえず待ってみたら?」

「え……?」

「いくら元カノとはいえ、誕生日くらい向こうから連絡くれるでしょ。それまではこっちから何も連絡しないようにするの。意外と彼のほうから“ヨリ戻そう〜”って言ってくるかもよ?」

彼女は、名案を思い付いたかのようなドヤ顔をしている。

「そうだよね……。友之なら連絡くれるよね」

確かに、1週間くらいは連絡を我慢することはできそうだ。それに、百花の言う通り、優しい彼のことだからお祝いのLINEくらいはくれるだろう。

その時までに、彼と話したいことをまとめておけばいい。

「それに、今日、百花と話してわかった。私やっぱり、友之のこと諦められない。だから、彼の気持ちを取り戻すためだったら、なんだってすることにした」

失恋3日目。

私は、彼と過ごす幸せな未来のため、まずは1週間の冷却期間を置くことを決意した。

しかし、この『誕生日の連絡待ち』が、のちに私をさらに苦しめることになるのだった……。


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元恋人の連絡を、自分の誕生日まで待つことにした樹里。しかし、気持ちは毎日揺れまくり…?