お金持ちは、モテる。ゆえに、クセが強いのもまた事実である。

そして、極上のお金持ちは世襲が多く、一般家庭では考えられないことが“常識”となっている。

“御曹司”と呼ばれる彼らは、結果として、普通では考えられない価値観を持っているのだ。

これは、お金持ちの子息たちの、知られざる恋愛の本音に迫ったストーリー。

▶前回:高級外車のドライブで“アレ”が聞こえてきて…。女がデートを切り上げた、御曹司の大好きな趣味とは?



玲奈(28)「信じられないくらい、タイプの人だった」


「玲奈さん、すごく可愛いね。僕のタイプどんぴしゃだ…」

初対面でそう声をかけてきた彼との交際は、たった半年で終わった。

彼は晋也という名前で、34歳。仕事は不動産関係で2代目社長。

こんなハイスペ男と付き合えることに、周りから羨望の目を向けられて、いい気持ちになっていたのもつかの間だった。

どんなに彼のことが好きでも、根本的な部分が違い過ぎた。彼の”理想の女性”にはなれないと思った私は、自分から別れを告げたのだ。

だから正直、彼と別れたことへの落ち込みより、安堵の気持ちが上回っている。

でもはじめて彼に会った時は「この人こそ運命の人だ」と、間違いなく思っていた。

知性が前面に表れている品のある顔立ちに、オールバックの髪型がよく似合っている。何にも囚われていない“自由”な空気を醸し出していた彼に、一目で惚れた。

― すべてが完璧…!

しかしその“自由”な雰囲気の正体は、とても私の手に負えるものではなかった。

度重なる出来事をきっかけに、彼を傲慢な男だと思うようになっていったのだ。


運命の人だと思っていたのに…。玲奈が感じたおぼっちゃまの傲慢さとは?



彼と出会ったのは、大学時代の友人である瞳と六本木でお茶をしていたとき。

「私たち、あと2年で30歳だよ。2年でどこまでキャリアを積めるかなぁ…」

ベンチャー企業の広報として目標を持って働く瞳は、こんなことを口にしていた。

「えー、さすが瞳。私は結婚して、もう少しゆるい仕事に変えたいな」

一方、信託銀行で決められた仕事を全うし、早く結婚したいと思っている私。

大学時代から、仕事に対するスタンスは真逆。だからいつも深い話にはならない。そんな私たちのゆるい話題が終わりそうなときに、晋也と目が合った。

― かっこいい人だなあ…。

偶然近くのテーブルで、晋也ともう1人男性がワインを楽しんでいた。晋也の左腕に輝いていたのは、リシャール・ミル。

一緒にいた男性が席を外すと、晋也は私たちに声をかけてきた。名前と年齢だけの自己紹介をして、すぐにLINEを交換。

『明日、会おうよ』

LINE交換してから、晋也はすぐに誘ってきた。この人はきっとスピード感を大事にする。その女の直感は当たっていた。

彼を他の人にとられたくない、と私も思っていたから好都合。

初デートは、西麻布の『田中田』で食事。

そしてそのまま近くの彼のマンションに遊びに行き、意図的に深い仲になるように持ちかけたのだ。

こうして私たちは、出会った翌日にお付き合いを始めた。



「俺たち、付き合おう」

家に行ったとき、きちんと言葉にしてくれた晋也。振り返ってみても、この時が幸せの絶頂だった。



「えー!いいな〜。結局付き合ったの?」

付き合った翌日の夜。

電話で瞳に報告したとき、とても羨ましがられていることがわかった。

― やっぱり、こういう反応になるよね。

瞳はかなりの美女。瞳も晋也をかっこいいと言っていたから、私はあのとき焦っていたのだ。

だが彼は瞳には連絡先を聞かなかったから、優越感に浸っていた。

晋也とは付き合ってすぐ、彼のお気に入りのレストラン『ラ・ビスボッチャ』に行く約束をした。

付き合ってまだ数日、幸せの絶頂期。でも急な仕事の都合で行けなくなった、と連絡がきた。

『ごめん。仕事が終わらないから、会うの別日にしてもらっていい?』

その連絡をもらったのは、会社でランチをしたあと。

夜のためにランチをサラダだけにしていた私は、内心かなり落胆した。でも仕事が忙しいことをとがめるのはやめようと、決めていた。

『残念だけどわかった!次、いつ会おうね?』

そう返信すると、結局週末を一緒に過ごすことに。

その週末は彼のマンション近くの明治屋で買い物し、家で一緒にワインを嗜みながら料理をする。

一緒に買い物をして家で料理するなんて、夫婦のようなデートで幸せだった。

― なんだかいい感じかも…。

しかしこんな幸せは、そう長くは続かなかった。



付き合って4ヶ月ほど経ったころだろうか。

『ごめん。今週末は両親の隔離期間が終わるから、久しぶりに家族の時間にしてもいいかな?』

晋也の両親は、ロスに住んでいる。晋也もインターからロスにある大学へ進学したと言っていた。

『わかった!平日会えるかな?』

『今週は少し忙しいから、調整するよ』

連絡は返してくれるが、結局その週に会えることはなかった。

このころから会う頻度が低くなり、かなりモヤモヤしていた私は、彼のFacebookを検索してみることにした。

お互いにSNSをフォローしていなかった私たち。すぐに晋也のページは見つかった。

彼は自社のことのみならず、出資している会社の採用の記事まで、ほとんどをオープンにしていた。

細かく見ていくうちに、ある投稿が目についた。

晋也の会社の採用のコメント欄で、女性との親し気なやりとりがあったのだ。


Facebookのコメント欄のやりとりで、玲奈はあることを確信する…。

<Aina Sugita:仕事熱心な子が来てくれるといいね!>

<Shinya Motomiya:本当、それに尽きるよ。やっぱり人として、仕事熱心じゃないと厳しいよね。笑>

― なるほど…ね。

彼からの連絡が少なくなる前、今後のキャリアプランについて聞かれた。案の定大したことは言えず、その話題はまったく盛り上がらなかったことを思い出す。

私の見た目が気に入って付き合ったものの、仕事に対しての姿勢がわかると、一気に冷めてしまったのだろう。

その女のページを覗くと、かなりの美貌の持ち主だった。学歴こそMARCHで私と同じレベルだが、実家はどうやらかなり裕福なようだ。

どう頑張っても勝てないし、私が今後仕事熱心になる予定もない。

『ごめんね、別れよう』

会って話すのはもう無理だな、と思ったのでLINEで伝えた。

― せめて向こうから、直接そう言ってくれればいいのに。

彼は自分が悪者にならないよう、私が振るように仕向けたのだ。

そんなの傲慢すぎる。



晋也(34)「令和にもなって、仕事が好きじゃない女性は無理」


綺麗な輪郭、平行の二重、高くて細い鼻に厚めの唇…。玲奈は、俺の理想に近しい顔をしていた。

― あの子、可愛いぞ…。

店に入った時から、俺は玲奈から目が離せなかった。彼女と一緒にいた子も綺麗で、2人は店内でとても目立っていた。

「晋也、あの子たち可愛いね」

一緒に飲んでいた、普段人に関心がないはずの親友・祐太郎も声をかけたがっている。

― まずいな…。

彼女をどうしても手に入れたい。祐太郎がトイレに行った隙に、目が合った玲奈に声をかけに行った。

祐太郎は幼稚園の頃からの親友で、親同士も学校の同級生。家族ぐるみの付き合いだが、俺以上の学歴と家柄の持ち主だ。

焦っていた俺は彼女をすぐ翌日のディナーに誘い、そのまま一緒に西麻布の自宅へ帰った。

そしてきちんと告白し、晴れて“カップル”になったのだ。

道を歩くだけで人がチラチラ見てくる、連れて歩くのには最高の女。

それなのに、深い話をすると、どことなくかみ合わない。

「玲奈はさ、どんなことがしたいの?将来」

「う〜ん、仕事は続けるかな…」

明確な目標がないことは、すぐにわかった。

― もしかして、専業主婦志望…?

それでも玲奈を愛おしいと思う感情から付き合い続けていたが、両親に久しぶりに会って考えは変わった。

俺の両親は2人とも起業家。一人息子の俺は、父の会社を継いだ。

一方、母が起業した会社はM&Aに成功し、FIREしている。

切磋琢磨し、ときには支え合って生きている2人の姿を見てきた俺は、玲奈と結婚するのは難しいと思ってしまったのだ。

経営には、どうしても波がある。だからこそパートナーにはこの苦しさを理解してほしい。

彼女から俺を振ってほしいと思うあまり、素っ気なくしてしまったことは申し訳なく思っている。

…そしておそらく玲奈は気づいていないが、秘密にしていることがあった。

玲奈と出会ったときに隣にいた瞳ちゃんと、連絡をとっていることだ。

玲奈ほど可愛い女は、大抵目立ちたがりだ。それゆえSNSに鍵はかけていないだろうという俺の推測は当たり、すぐに玲奈のInstagramを見つけることができた。

そしてそこから瞳ちゃんを見つけて、DMを送ったのだ。

彼女が頑張って働いていることは「平日の約束は21時以降でないとできない」と言われたときに、すぐわかった。

― 声をかける人が、逆だったか…。

瞳ちゃんとは1回軽く飲んだだけで、まだ深い仲にはなっていない。

それでも瞳ちゃんさえ了承してくれれば、付き合うのは問題はないと思っている。

合わない人とは、どう頑張っても合わせられないから。

瞳ちゃんは、玲奈よりは華はない。だが可愛さだけではどうにもならないこともあると、身をもって感じたのだ。


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