初デートで「もう少し一緒にいたい」と言われるのは、“都合のいい女”フラグに違いない

初デートで「もう少し一緒にいたい」と言われるのは、“都合のいい女”フラグに違いない

―美人じゃないのに、なぜかモテる。

あなたの周りに少なからず、そういう女性はいないだろうか?

引き立て役だと思って連れて行った食事会で、全てを持って行かれる。他の女性がいないかのように、彼女の周りだけ盛り上がる。

「クラスで3番目に可愛い」と言われる化粧品会社勤務・莉乃(27)も、まさにそんな女だった。

美人だけどモテない陽菜が、デザイナーの健太郎を夜の青山に呼び出した。2人が過ごす一夜は…?


健太郎を狙う美女・陽菜が耳元でささやいた言葉とは?


「妥協婚なんて…絶対にイヤ」

ここは、南青山の『バー ブーツ』。陽菜はさっきまでの結婚式の不満をもらす。

健太郎はほほえみながら、静かに聞いてくれている。

「健太郎さんは、妥協婚なんて関係ないでしょう?慶應卒でデザイン事務所を経営していて、見た目もステキ。すごくモテそう」

陽菜は、はらりと落ちた髪を耳にかけながら、上目づかいで彼を見つめる。

―高収入、高身長、高学歴…“3K”を絵に描いたようなひと。結婚相手として…カンペキ。

「全然そんなこと、ないですよ」健太郎は、伏し目がちにウィスキーを口に含む。

カラン、と氷の乾いた音がした。

「そういえば莉乃さん、手紙渡したんでしょ?」

―何て書いてあったのかしら…。ねえ、教えてください。

その言葉を言わずとも、酔ってうるんだ目で健太郎に訴えかける。

「いつもありがとうございます、のひと言でしたよ」

健太郎は涼しげにほほえみ、陽菜を見つめ返してくる。

ふーん、つまんない。とつぶやき、陽菜は健太郎の方に向き直り、耳元でささやいた。

「わたしには…興味あります?」


健太郎の答えは…?

地方国立大の垢抜けない女じゃ、上質な慶應女子には勝てない


「それで、健太郎さんは何て答えたの?」

真央が身を乗りだして、聞いてくる。

「興味がなかったら、来ません。だって」

模範解答!とはしゃぐ真央から目をそらし、陽菜はきれいに盛りつけられたラムラックステーキをうっとりと見つめた。



今夜は、恵比寿の『チーナ ニューモダンチャイニーズ 恵比寿本店』で月に1度の2人での女子会。

すてきなレストランを開拓しよう、と提案したのは陽菜だ。ここは去年の10月にオープンして以来、陽菜がずっと行きたがっていた店だった。

「その後の質問が、ちょっとナゾなのよ」

陽菜は柔らかいラム肉を美味しそうに頬ぼり、話を続ける。

「愛されるのと愛するのは、どっちが難しいと思いますか、って」

「なにそれ、感性的。さすがデザイナーだね」

2人は声を合わせて笑う。

「最後は、タクシーで家まで送ってくれたの。紳士的よね。次の約束もしたし、脈アリかな」

リップの跡が残るワイングラスをそっと拭きながら、陽菜はうふふ、と笑う。

「莉乃も健太郎さんを狙ってるみたいだけど、失笑よね。ああいうしたたかなタイプって、意外と男ウケいいから、“なんでみんな、勝手に狂っちゃうのかな”みたいな思い上がり、してそうじゃない?

それって、カン違いもいいところよ。美人に振り回されると仕方ないってなるけど、手が届く女にそうされたら、え?なんでこんな女に?って逆に気になるでしょ。

AKB48が、いい例。1番の美人より、なんであの子?っていう子がセンターになると、みんなが注目するじゃない。でも健太郎さんクラスは、そういう“3T”女じゃ、無理よ」

「3T女?」

その言葉に、真央が目をまるくする。

「クラスで3番目(Third)くらいのそこそこ、のTよ。顔、スタイル、学歴や家柄、全部そこそこ。東京から離れた、垢抜けない子が多い国立の大学ではモテるかもしれないけど、洗練された慶應生相手じゃ、勝負できないでしょ」

なるほどね。と真央はあいづちを打った後、ちょっとお手洗い、と席を立った。

―我ながら、うまいこと言ったわ。

したり顔でワインを飲む陽菜の耳に、となりに座る同い年くらいの女性たちの会話が聞こえてきた。

「よく口説かれるからモテるってカン違いしてる女、かわいそうだよね」

思わず、耳をかたむける。


初対面で「もう少し一緒にいたい」は、都合のいい女フラグ?

“都合のいい女”を容赦なくたたく、女たちの宴


「初回のお食事会やデートで外見をベタ褒めされて、“もうちょっと一緒にいたい”って言われたら、都合のいい女フラグだよね」

「わかる。本命なら、また、会える?だよね。最初からせまらないでしょ」

「プライドの高い肉食系美女ほど、そこをカン違いするんだよね。わたしが魅力的なばかりに、男を吸いよせちゃった、って」

「面倒だから本命としては避けたいけど、スパイスとしては極上な女ね」

「そう。利用するのに、とても都合のいい女」



女たちがすずをふるような声で笑うと、すっと酔いが覚めた。

―こんなの、モテない女のひがみよ。

陽菜は、自分に言い聞かせる。

これまで、たくさんの男にそう口説かれ、モテていると思ってきた。初めてのデートで「もう少し一緒にいたい」と言われたことは山ほどある。私が利用されてきた?そんなわけ、ない。

―それに、健太郎さんはせまってこなかった。なら、本命でしょ?

ヴー、とスマホのバイブが鳴る。我に返り、救いを求めるように画面を見る。

―また行きましょう。今度はぜひ、みんなで。

次の飲みのお誘いへの、健太郎からの返事。くらっとめまいがしたのは、酔いのせいじゃない。

「興味がなかったら、来ません」

本当はこんなこと、言われていなかった。真央から莉乃に伝わればいいと思って言った、嘘だった。

―都合のいい女。さっきの女たちの言葉が、耳の奥でリフレインする。みんなで、ってことは、それ以下なの?

お待たせ、と戻ってきた真央の声が、妙に遠くから響いた。



「真央さん、なんだかお疲れじゃないですか?イベントの準備もありますし、ちゃんと休んでくださいね」

心配そうに真央の顔をのぞきこみ、莉乃はリポビタンDとチョコを机に置く。

「ごめん、昨日飲みすぎただけ。ありがと」

莉乃らしい、かわいらしい思いやり。

敵認定された女性には容赦しないけれど、本来はひとになつきやすい持ち前の素直さが、莉乃の魅力だ。

「そうだ、今度、健太郎さんとチームで飲むじゃない?莉乃、来れないんでしょ?」

―そんな話、初耳です。その言葉は飲みこみ、「幹事が陽菜さんの飲み会ですか?」と聞いた。すると真央は「そうよ」とあっさり答える。

「残念です。次の機会に、ご一緒させてください」

莉乃はそう言いながら真央に笑いかけ、その場を後にした。

―フェアじゃないなあ。そう来るなら私も、本気を出しちゃおうかな。

スマホを取り出して健太郎にメッセを打つ。送信。

莉乃と陽菜の本気の戦いは、こうして始まった。


▶NEXT:3月28日火曜更新予定
それぞれ動き始める、莉乃と陽菜。それを見つめる真央の本音は?


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