遠征先のマレーシア・クアラルンプールで交通事故に巻き込まれて大ケガを負ったバドミントン男子の世界ランキング1位・桃田賢斗(25=NTT東日本)に対し、早期復帰を推す声が強まってきた。当初は事故のフラッシュバックを懸念して長期休養を勧める意見が多かったが、ものは考えよう。むしろ早期復帰こそが最良の“処方箋”という大胆な見解も出ているのだ。果たして、桃田が進むべき道は?

「マレーシア協会の手配でバンに乗った時、私自身も事故のことを意識してしまった」

 こんなトラウマを口にしたのは日本バドミントン協会強化スタッフの中西洋介コーチ(40)だ。同コーチは13日早朝、事故直後に現場に駆けつけた。運転手は死亡し、ワゴン車は大破。顔から出血し、ぼうぜんと路肩に座り込んでいた桃田に寄り添ったという。事故車に同乗していないのにフラッシュバックを味わうのだから、桃田に対して「精神的ショックは少なくないと感じる。同じようなシチュエーションになると思い出すのではないか?」と話した。

 事故当初から桃田はメンタル面で心配されてきた。目の前で人が亡くなっているためPTSD(心的外傷後ストレス障害)の懸念もあり、無理せず長期戦線離脱を勧める意見が主流だった。しかし、その一方で正反対の意見も出始めた。

 事故直後から桃田と接触してきた日本バドミントン協会の朴柱奉ヘッドコーチ(55)は「本人は絶対に(バドミントンを)やりたいと思っているでしょう」と代弁し、早ければ2月3日からの合宿に参加することを示唆。3月の全英オープン(バーミンガム)で実戦復帰を目指すプランも改めて公表し「順調にリカバリーすれば、試合は問題ないと思います」と太鼓判を押した。朴氏は桃田と頻繁にコミュニケーションを取る中で早期復帰への感触をつかんでおり、関係者の一人は「大好きなバドミントンをやることが一番」と本紙に説明した。

 4年前、リオ五輪直前に違法賭博行為が発覚して無期限出場停止になった際にも桃田はバドミントンと向き合うことで自らを鼓舞し、這い上がってきた。今回も練習や試合に集中することで事故のトラウマを払拭し、「バドミントンこそ最良の薬になる」というのが早期復帰派の算段だ。

 肉体も順調に回復している。所属先のNTT東日本によると、20日に抜糸して現在は自宅療養中。各方面の関係者に「もう1回頑張ります」「しっかりケガを治します」と前向きなLINEを送っている。

 朴氏によると、事故直後に動揺していた桃田は翌日(14日)には「テレビを見てリラックスし、落ち着いていた」と言い、顔面3か所の裂傷を指して「ハンサムに戻りますかね?」と冗談を飛ばすほど心に余裕が出てきたという。

 東京五輪金メダル大本命の元気な姿は、予想以上に早く見られるかもしれない。