【クイーンC(土曜=15日、東京芝1600メートル)美浦トレセン発秘話】ノムさんこと野村克也氏が虚血性心不全により11日、亡くなった。幼少からヤクルトファンだった当方にとって最も感動的だったのは1978年の球団史上初Vだが、ファンとして最も胸を張れた時代は野村監督がチームを率いた90年代である。計9年で4度のリーグ優勝、3度の日本一。その礎たるID野球は、言い換えれば“スポ根”から脱却した心と頭と技の野球。「人間的成長なくして技術的進歩なし」は野球の垣根を越えた名言であり、采配のみならず選手を育てることに関しても超一流の名伯楽であった。ご冥福をお祈りします。

 一方、競馬界における「名伯楽」と当方が勝手に認識する一人が国枝栄調教師。厩舎担当となり年月が長いが、実はこれまでスタッフに対して声を荒らげる姿を見たことが一度もないのだ。それでも各人が貫くのは「馬優先主義」という徹底したプロ意識。怒ることと育てることは別次元…それを常々思い知らされる伯楽の姿である。

 さて、そんな国枝厩舎が今週、満を持して期待馬マジックキャッスルをGIIIクイーンCに送り出す。サフラン賞は阪神JFの2着馬マルターズディオサとクビ差(2着)。続くGIIIファンタジーSは同優勝馬レシステンシアから1馬身差の2着。力量的には暮れの2歳GIでも確実に上位争いになったろうが、あえて休養を選択するのが「名伯楽」たるゆえんだろう。

「デビューから2戦はハミに乗っかって、勢いだけで走っている印象が強かった。それでも前走では初めてしっかりタメて運んで、最速上がり(34秒6)をマーク。もう少し心身の成長があれば、もっと良くなるイメージを抱けたからね。オレとしても今回の放牧は大正解と思っているよ」

 こう語るのは厩舎の番頭格たる鈴木勝美助手。3か月半の充電が無駄でなかったことは、帰厩後の姿が雄弁に物語る。

「後ろがしっかりしてきたことで、牧場でも体を起こして走るトレーニングに変え、走りにメリハリが出てきた。美浦では楽に追走してグッとギアを上げる調教をしているが、反応が良くなり加速力も変わってきた。精神的な落ち着きも出てきたから、これが競馬でどう生きるてくるか…楽しみだね」(同助手)

 心身の成長なくして技術的進歩なし――。そんな“野村イズム”を体現するような走りを今週の同馬には期待したい。