【栗東トレセン発秘話】別に自慢する話でもなんでもないが、クリソベリルを管理する音無調教師に「1着賞金が11億円もあるダートのレース(=サウジカップ)がサウジアラビアにできるらしいですよ」と最初に伝えたのは記者である。

「ホントか? それなら来年の大目標はそこになるかもしれんな。もちろん、チャンピオンズCを勝ったら…だけど。ワッハッハ」と笑い飛ばすトレーナーに「そんなレースを勝っちゃったら、2月末で最多賞金(獲得調教師)は決まりですね。アッハッハ」と応対したのは半年近くも前のこと。そのサウジC参戦が現実のものになるなんて、当時は思いもしなかった。

 改めて調べてみると、サウジアラビアへの遠征には検疫の問題が大きく立ちはだかっているだけでなく、サウジアラビアとドバイ(UAE)は国交がないことなどから、サウジ→ドバイへの連戦もほぼ無理。クリアすべき問題が多過ぎる…と考えていたからである。

 ゴールドドリームの平田調教師に至っては「ネットのニュースで知ったよ…ってまあ、それは冗談だけど(笑い)。チャンピオンズCで引退させるつもりでおったし、発表もしてたからさ。それがドバイでもなくて、サウジなんやからビックリしたわ」と遠征そのものがビジョンになかったらしい。

 そんな2頭が12日に栗東での最終追い切りを終了し、翌13日には検疫のために美浦へと入厩。来週19日にはサウジアラビアに向けて出国する。状況の変化というのは本当に予測できないものだ。

 検疫の問題をクリアしたことも驚きだが、国交のないドバイWCへの連戦が可能になっただけでなく、別ルートでドバイに遠征する日本馬たちとも同じ便で帰国できるとは…。関係各所の方々の尽力は相当なものと推測されるが、それを可能にしたのも、可能にするために多くの方が頑張ったのも、今回のサウジCが“第1回”の記念すべきレースだから…ではないだろうか。

「そうなんだよね。確かに高額な賞金もあるだろうけど、サウジCは今回が1回目。オーナーサイドもそこを重要視しているみたいだよ。サウジとドバイは関係があまり良くないみたいで、片方のレースしか使えないとなった場合はドバイではなく、サウジを優先する可能性が高かった。もちろん、ドバイWCも重要視しているし、ドバイとサウジが似たような馬場であるのなら、2戦目のほうがいろいろなことをわかった状態で出走できると思う。それでも、サウジCはドバイへの叩き台ではないと言っておきたいね」(音無調教師)

 イメージ的には急転直下の参戦で、賞金は10着でも2200万円という破格な条件。“超高額の叩き台”なんて声も出てきそうだが、実は高いモチベーションで挑む一戦であり、これは海外の関係者も似たようなものだろう。

 振り返れば、ドバイワールドカップの“第1回”には米国の英雄でGI・11勝をマークしたシガーが登場。そのレース名の浸透に貢献した。賞金が大幅にダウンしたペガサスWCはもちろん、次のドバイWCよりもメンバーレベルが高い――。今回のサウジCはそんな状況になるかもしれない。