新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により図らずも“第2のスチュワート”が誕生するかもしれない。米大リーグでは開幕が5月中旬以降に延期。また一部メディアはMLBが6月に予定していたドラフト会議の中止を検討していると報じた。1年先延ばしとなれば有望選手を抱えている代理人サイドとしても大痛手で“スチュワート方式”の売り込みは十分にあり得る話だ。

 昨年、ソフトバンクは前年のMLBドラフトでブレーブスから1位指名されながら身体検査に引っかかり、契約金を下げられたことで契約には至らなかったカーター・スチュワート投手(20)を獲得して話題を呼んだ。片鱗はすでに見せており、20日に行われたロッテとの練習試合(ペイペイドーム)で“一軍デビュー”すると、5回を3安打1失点と好投。5四球と制球に苦しむ面もあったが、最速154キロの直球に変化球のキレも上々で5三振を奪った。

 新型コロナウイルスの影響で開幕が延期となるなど暗いニュースばかりが続く球界にあって、スチュワートの好投は数少ない明るい話題の一つ。その成長ぶりには工藤監督も「楽しみが増えました」と笑みを浮かべた。

 もともとのスケジュールに沿って練習試合を開催している日本と違い、米大リーグは13日(日本時間14日)にキャンプの中断を決定。早くても開幕は5月中旬以降になる見込みで、最近では“7月開幕説”まで浮上しているほどだ。試合数が削減されれば、各球団は大幅な減収となる。すでにシーズン停止期間中の国内外すべてのスカウト活動の休止が決定しているだけでなく、一部メディアは6月に予定されているドラフト会議の中止がMLBで検討されているとも報じた。

 非常事態とはいえ、ドラフト会議が中止となれば有望なアマチュア選手が宙に浮く。ソフトバンクの球団関係者は「うちに関して言うと外国人枠の問題もある。それに性格面も含めてチェックしないといけない。そう簡単なことではないが、1年先送りとなるなら日本行きを選択肢の一つにする選手は出てくるかもしれませんね」と話す。

 実際、代理人サイドの思惑として、日本を受け皿にする売り込みの動きが出てくるのではとの観測もある。米国では代理人が有望アマ選手を抱えているが、ドラフトが中止になって実入りがなくなれば死活問題。2021年に2年分の選手がドラフトされるとしても例年より指名順位は激戦必至で、指名順位が下がれば契約金も下がるのだからなおさらだ。

 米球界ではどんな有望株でもメジャー昇格までの下積み期間があり、調停権を得るまで年俸は極めて安い。スチュワートの例をとっても、ソフトバンクの6年総額7億7000万円は厚待遇だ。選手の意思さえあれば、日本式の育成を受けて米球界にUターンするメリットは確実にある。

 スチュワートはかつて「自分が成功して(同じようなルートで日本に)来る人が増えるかもしれない。そこも考えて決めた」と話していた。開幕時期が決まっていない点では日本も米国も同じだが、練習試合であってもスチュワートが好投を続けるようなら「(米国では)スポーツがやっていないですし、向こうでも報じられると思います。見る人が見れば確実に成長しているのが分かると思います」(球団フロント)。思いもよらぬ大物アマチュア選手が続々と海を渡ってきても不思議ではない。