逆境下のエースが存在感を見せた。立ち技格闘技イベント「K―1」の年間最大イベント「K’FESTA.3」(22日、さいたまスーパーアリーナ)で、武尊(28)が新たな夢への第一歩を踏み出した。直前に対戦相手が変わるアクシデントに見舞われるも、予告通り進化した姿を見せつけてペッダム・ペットギャットペット(24=タイ)に圧勝。エースは次なる目標を見据えている。

 武尊は当初、ISKA世界ライト級王者アダム・ブアフフ(29=モロッコ)と、自身が持つK―1スーパーフェザー級王座をかけたダブルタイトル戦を行う予定だった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、ブアフフが来日をキャンセル。19日に対戦相手がペッダムに変更となったが、動じることはなかった。

 今年からボクシングなど他ジャンルの技術を積極的に吸収した成果を見せつけるかのように、1R終了直前に強烈なパンチを決めて最初のダウンを奪う。2Rも攻撃の手を緩めずロープ際に追い込み、パンチのラッシュでKO勝ちを収めた。

 試合後は涙ながらに「大変なことがあると思うんですけど、格闘技は本当に、人にパワーを与えられるスポーツだと思うんです。『こんな状況で』って言われると思うんですけど、格闘技ってすごいスポーツなんです。格闘技で、もっといろんな人にパワーを与えたいんです!」と賛否両論が巻き起こった新型コロナ禍での強行開催について、自身の考えを訴えた。

 エースとして、まだまだK―1マットをけん引する覚悟があるからこその発言だった。もちろん一ファイターとしても、次なる目標に向けて動きだす。目指すのは、“真・ワールドグランプリ”の実現だ。かねて「海外にも出て試合をしたい。K―1最強を証明するために外に出向くことが必要なら出向きます」と口にするが、実はその思いには続きがある。「一番は世界中の王者が集まって、K―1のリングで最強の王者を決めるトーナメントをやりたいんです。昔のK―1はそうだったじゃないですか。それを僕が実現させたい。そうなるためなら自分が出て行ってもいい」

 旧K―1は日本各地のドーム球場などでトーナメントを開催。世界各国の王者クラスが集結し、日本中を熱狂させた。武尊がイメージするのは、まさに当時の舞台。そのためにも、有力選手の開拓に自ら動く。本来ならISKAのベルトを“通行手形”の一つにするはずだったが、目標は変わらない。それに、消滅したダブルタイトル戦が今後組まれる可能性も十分にある。勝利で新章をスタートさせた男が、K―1を次なるステージに導く。