【西川結城のアドバンテージ(18)】Jリーグがリスタートする。新型コロナウイルスの影響で2月下旬から中断に入り、約4か月。この間、顕著だったのは競技団体としての透明性や公共性だった。真っ先に中断を決めたアクションにしても、プロ野球界に呼びかけ始まった感染症専門家会議にしても、全選手対象のPCR検査に向けた迅速な動きも。村井満チェアマンをはじめとする組織が見せてきた決断と実行は国民感情に寄り添いながらもサッカーを取り戻すべく、最善を尽くす行動だった。

 先日、ある企画で村井氏にインタビューをした。ここまで葛藤は常にあったという。5月下旬、専門家会議でPCR検査導入の推奨と実施のお墨付きを受けたあと、短期間で大規模なリソース獲得に動いた。「心身ともに私個人も相当消耗した期間でした」と安堵感と徒労感をにじませる。明晰なジャッジで組織を方向付け、時に自らも体を張って解決へと導く。リーダーの気概が伝わってきた。

 村井氏は、足でボールを扱う不自由さを内包したサッカーと、目に見えないウイルスと時に不条理な戦いを強いられる現在を重ね合わせた。

「改めてサッカーの定義とは。ただボールを蹴ることではなく、困難な状況を乗り越えて前に進むことだと思います。サッカーにはミスはつきもの。ボールが来ると信じて走り続けても来ないこともある。シュートが枠に飛ばない。そうした心が折れる瞬間の数々でも、そこを乗り越えていくことの大切さは誰よりサッカーを愛する人であれば理解してもらえる。我々サッカーに関わるすべての人間はここから社会に向けて、困難なところから立ち上がっていく姿を見せていきたい。それこそが極めて重要なアクションだと思います」

 聞いた瞬間、ふとある選手が思い浮かんだ。昨年11月に左ヒザの大ケガを負ったJ1川崎のMF中村憲剛。コロナ禍の影響でもポジティブに復帰に向けて汗をかくが、長らく丁寧に、大切に扱ってきた体にメスを入れた事実は、精密な技術が売りのMFの心に少なからず影を落とした。

 この中断期間、Jリーグは職員の士気向上や連帯促進のため、選手を招きオンラインミーティングを開催。かねて村井氏の姿勢を尊敬する中村も参加したという。今回、村井氏が語ったサッカーの本質。それをすぐに中村に伝えた。「さすがですね。僕もまた前を向ける」。困難を乗り越える。言葉をかみしめながら再び心に火がついた。多くの人間の思いが込められ、Jが始まる。サッカーがそこにある現実。喜びが、戻ってくる。