青森県内外の新入学児童に防犯笛「たすけっこ」を贈り続けている青森市のボランティア団体「たすけっこの会」(里村誠悦会長)が発足して今年20年目を迎える。被害者も加害者もつくり出したくない−との一念で製作してきた笛は、これまでに26万個を超えたという。会員は「より多くの人に命の重みを伝えたい」との思いを大切にしてきた。

 「(添付する)メッセージはどうする?」「『ともだちをいっぱいつくって』というのはどう?」。1月8日、青森市の甲田中で開かれた、たすけっこの製作研修会。市内の中学校全21校の生徒代表約80人が、たすけっこの会会員の指導を受け、笛にひもを取り付ける作業や袋詰め、メッセージカード作りなどを進めた。

 主催した市中学校文化連盟生徒会・奉仕活動専門部(部長・須藤浩延甲田中校長)は、生徒たちに防犯意識を高めてもらおうと研修会を企画。今回の製作分も含めた約3千個が、青森市や県外小学校に贈られる。

 たすけっこの会は2001年6月、大阪教育大付属池田小(大阪府池田市)での児童殺傷事件に衝撃を受けた県内有志が同年7月に組織。子どもたちの安全・安心を守ろうと毎年、地元産のネマガリダケで笛を製作し、青森市内の小学校や池田小など県内外に贈呈してきた。

 製作の工程はネマガリダケを伐採、洗浄し約1年乾燥。程よく黄色に変色させた後、長さ7センチずつに切りそろえ、内部をくりぬき空洞にする。吹いたら「ピーッ」と甲高い音が響き渡るようにするため、息が当たる「鳴り口」を切り込む角度など、細部の加工には気を使う。現在は会社経営者や医療関係者ら15人が、作業を分担している。

 児童数が減っているとはいえ、製作個数は今も年間数千個に上る。プラスチック製の防犯笛などに比べて丈夫で、丁寧に作り込まれたたすけっこは人気があり、県内外から毎年「欲しい」と引き合いが強い。

 「準備は1年がかり。手間がかかっています」と同会事務局長の奈良哲紀さん(69)は言う。

 作業終盤の加工は、市内の中学校生徒や高齢者のボランティアが担う。同会によると、これまでに延べ2万6千人が協力してきた。

 「19年前に始めた活動がここまで広がった。一つずつに製作者の思いが込められている。この笛が小さな命を救うだけでなく、(事件を未然に防ぎ)加害者をつくり出さないようにもできる」と語る奈良さん。「この笛を使わなくても良い時代が来ることが一番」と力を込めた。

 横内中生徒会副会長の櫻田栞穂(しほ)さん(2年)は、2回目の参加とあって手慣れた様子で約20個を製作。「せっかっくもらった笛は(どこかに)忘れず持ち続けてもらいたい。そして何かあった時にはためらわず吹いてほしい」と話した。

 長年、市内小学校が笛の寄贈を受けてきたことに成田一二三教育長は「小学生はこの笛を持つことで、また中学生はこの笛を作ることによって、安全・安心に対する意識が高まると考える。大変有意義な活動であり、今後も続けてほしい」とコメントした。