芥川賞、直木賞候補にノミネートされた青森県八戸市出身の2人は賞に届かなかった。東奥日報取材に木村友祐さんは「さらに書くペースを速め、また挑戦できれば」、呉勝浩さんも「いろいろな作品にチャレンジしたい」と述べた。

 芥川賞選考委員の島田雅彦さんによると、木村さんは最終選考まで残った。島田さんは講評で「エンターテインメント的との評価が多かった」と指摘。政治批評もふんだん、とした上で「私はタイムリーさを買った。一方、主人公の『ええかっこしい』は陳腐なニヒリズムだ、などの意見もあった」と明かした。

 木村さんは「(芥川賞が)自分には縁がない賞だと思ってきた。文学界の最高権威ということ自体、どうなのかという思いもあったので、候補になった時は断ることも考えた」という。その思いを封印し候補を受けたのは、両親や家族、編集者たちが喜んでくれたから。「本当は受賞して、もっと喜んでもらいたかったんだけど」と漏らした。

 一方、直木賞選考委員の浅田次郎さんは、呉さんの作品を「面白く読んだが、まず映像ありきという印象」と講評。小説のスタイルを取らない、最近多いタイプの作品と位置づけて「(作中で)これだけ多くの人が死ぬのならば、その苦悩を作家が背負わないと文学とはいえない。(その点で)私は否定的だった」と述べた。

 呉さんは「結果は残念だが、いい経験をさせてもらった」ときっぱり。「今回初めて、一番いただきたい賞の候補に挙げてもらった。また参加する資格ができたので、いずれは受賞を目指せれば」と意欲を示し「ミステリーに限らず、全く違う方向の作品などにもチャレンジしたい」と力を込めた。

▼県内のファン「今後に期待」

 いずれも八戸市出身の芥川賞候補・木村友祐さんと直木賞候補・呉勝浩さんが15日、受賞を逃したことを受け、県内のファンや文学関係者は残念がりながらも、今後に期待を寄せた。

 八戸市の八戸ブックセンターではパブリックビューイングが行われ、約30人が発表会場からの生配信が映し出されるスクリーンを見つめながら吉報を待った。

 午後5時50分ごろ、木村さんの芥川賞落選が判明すると、「残念」との声が漏れた。続いて直木賞候補の呉さんも受賞を逃すと「がっかり」「次に期待だ」との声が上がった。

 木村さんの兄と交友があるという佐藤雅彦さん(59)は「今回初めての候補。まだまだ次がある」とエールを送った。小説を書くのが趣味という青森市の三上陽子さん(41)は「残念ですが、いい作品だった。2人には書き続けてほしい」と話した。

 八戸ブックセンターの音喜多信嗣所長は「ノミネートの段階で名前が全国に売れた。ダブル候補ということで、『本のまち八戸』を後押ししてもらった」と語った。

 県近代文学館(青森市)の伊藤文一(よしかず)室長は「残念だったが、木村さんはこれを機に注目を集め、作品を通して投げ掛けていることに耳を傾ける人が増えると思う。呉さんの作品もすごく評価が高かったので残念。今後に期待して引き続き応援していきたい」と話した。館内に設置した2人の特設コーナーは、しばらくの間展示を続けるという。