八戸駅東口を出て駅前通りを歩くと、1902(明治35)年から営業する老舗の酒専門店「木津商店」がある。2010年に東北新幹線が八戸駅から新青森駅に延伸され、売り上げの減少に頭を抱えてきた。店主の木津文孝さん(72)によれば「八戸駅が新幹線の終点だった頃は観光客が降りて、うちの店で地酒をお土産として買っていった。この流れが変わってしまった」。

 改革の転機は、19年2月に訪れた。青い森信金本部(青森県八戸市)で開かれた経営相談会に参加した際、売り上げの低迷を打ち明けた。すぐに青い森信金の経営サポート部が動いた。

 青い森信金側が提案したのは、英語表記のあるパンフレットの作成、一目で酒店とわかる看板への掛け替え、店内にも英語を使った酒の解説表記を付けること。新たな顧客ターゲットにしたのは、韓国や台湾などからやって来る外国人観光客だった。県よろず支援拠点の専門家や八戸商工会議所と連携し、日本商議所の補助金を活用することを決めた。

 「Welcome!」、大きな文字の「酒」−。19年11月、木津商店の看板が真新しくなった。英語表記のあるパンフレットも作り、八戸駅周辺にある四つのホテルとレンタカー店に置かせてもらった。それからまだ数カ月だが、パンフレットを手に店を訪れる外国人が増えてきた。

 木津さんは「売り上げをなんとかしたいと思っていたけれど、自分だけではどうにもできなかった。信金とは長年の信頼関係があって、よく知っている職員に相談できた。背中を押してくれた」と振り返る。

 青い森信金は18年4月、本部内に事業者の課題解決を支援する「経営サポート部」を新設。19年12月末までに160件の経営相談に応じた。

 超低金利により「利ざや」で稼げない中、青い森信金は店舗の削減で経費を抑えつつ、職員は渉外にシフトしている。経営相談によって先々の事業性融資を増やす戦略を取っている。

 経営サポート部の佐々木慎太郎副長は「これまでは資金を貸すことが第一だった面がある。今は知恵を貸すことを大事にしている。木津商店は価格面で量販店には勝てない。強みは県内の地酒と全国の日本酒だった。だから増えている外国人観光客をターゲットにした」と語る。

 木津商店の一連の改革に伴う費用は約100万円。半分は補助金を活用することができた。木津商店がリニューアルするまで10カ月ほどかかったように、経営サポートには時間がかかる。現在の青い森信金が目指しているのは「まち医者」の役割。他の金融機関との金利競争に陥らず、足しげく事業者を訪問して相談に応じることを重視している。

 佐々木副長は十数年前、八戸駅通支店に勤務し、渉外活動で木津商店を訪問していた。こうしたつながりが信金の原点になっている。

 「地縁、人縁は信金の強み。売り上げを増やしたいと思っていても、やる気がないと話が進まない。木津商店のような事例を増やしていきたい」と佐々木副長。経営サポート部の伊藤市夫部長は「経営支援には専門家の力も必要なので、派遣できる体制を築いている。相談を受けたら、基本的になんとかしてあげたいという姿勢で臨んでいる」と話す。