人口減少や超低金利で地方銀行が苦しむ中、金融行政はめまぐるしい動きを見せている。規制緩和や、地銀の経営統合をしやすくする独占禁止法の特例法案は、これまでの地銀の姿を変える可能性がある。金融の法制度に詳しい大和総研金融調査部制度調査課次長の金本悠希主任研究員は「金融政策はアメとムチを提示している」と指摘、独禁法の特例法案が今通常国会を通過・成立すれば「地銀の収益力を見守る時期が続くだろうが、統合は今後10年間が注目される」と語る。

 −地銀の現状をどうみているか。

 「人口減少に伴い需要が減っている。しかし非常に大きいのがマイナス金利。貸し出しの金利で稼ぐというビジネスが立ちゆかなくなっている。マイナス金利政策は当面変わりそうもなく、厳しい。直ちに破綻するレベルではないが、地銀は先を見据えて対策をとっている。中には経営統合を進めている地銀もある」

 −地銀経営の厳しさを踏まえ、金融行政はどのような政策をとっているか。

 「収益力を向上させようとアメを与える一方で、向上できなければムチもある。ムチの中には事実上の経営統合を促すことも含まれていると思う」

 −アメとは。

 「地域活性化事業や事業承継などに地銀が取り組みやすくするため、銀行が会社の株を5%超保有してはいけないという規制を緩和した。もう一つは、地域商社などにも5%までしか出資できなかったが、100%出資できるようになった。銀行の定期人事異動も撤廃し、行員が顧客と長期的な信頼関係を築きやすくしている」

 −ではムチとは。

 「おおむね5年以内に、(銀行が保有する)投資信託の解約損益を除いたコア業務純益(本業のもうけ)が継続的に赤字、または(経営の健全性を示す)自己資本比率が4%を下回ることが見込まれる銀行に対して業務改善命令を出す。投資信託の解約益でコアをかさあげしている銀行には影響が大きい」

 「業務改善命令は行政処分なので強力だ。店舗・人員の見直し、資本増強、配当の抑制などを確実に履行する経営管理体制の確立を求めるとされている。これは、経営陣を退任させることもあるのでは−と受け止められている」

 2018年に金融庁の有識者会議は、青森県など23県を1県1銀行でも存続が困難な地域として試算した。

 −独禁法の特例法案をどうみているか。

 「自主的に経営統合を進めようとしている銀行に適用されることになるのではないか。特例法ができれば同じ県でシェアが高くなっても統合しやすくなる。当面は各銀行の収益力向上への努力を見守る状況が続くと思われるが、どうにもならない銀行は経営統合せざるを得なくなるのではないか。特例法の期間とされている10年間が注目される時期だ」

 −金融行政は地銀の経営統合を進めようとしているのか。

 「経営統合に関して金融庁に強制力はない。あくまで統合したい銀行に対する環境整備だ。ただ一般的には、特例法が成立すれば、国としては適用したいと思うのではないか−とは言われている」