新型コロナウイルスの影響で青森ねぶた祭が中止になったことを受け、青森公立大学(青森市)の学生たちが6月、ねぶた師をインタビューし、証言をまとめる作業に奔走した。ねぶた師への経済的支援に向けたクラウドファンディング(CF)の一環。支援者へのメッセージを募る一方、祭り中止に対する率直な思いなども尋ねており、関係者は「ねぶた師の生の声を残す貴重な資料になる」と期待を寄せている。

 「ねぶた祭の中止について一言お願いします」「来年に懸ける思いを聞かせてください」。6月上旬、青森市内にある、ねぶた師・立田龍宝さん(35)の作業部屋。同大学3年の三上華歩さんと野呂優華さんはスマートフォンのカメラを向けながら、立田さんに思いを尋ねた。

 学生の問いかけに、立田さんは「正直ショックだった」と悔しさをにじませつつ「年中通じて、ねぶたを作ったり描いたりというのが一番うれしいこと。来年に向けた構想も十分時間をかけてできるし、いろいろなものに一から挑戦したい」と前向きに答えた。

 三上さんと野呂さんは、佐々木てる教授(社会学)のゼミに所属。ゼミでは毎年、学生が現場に足を運んで、囃子方(はやしかた)の歴史の考察、他地域の祭りとの比較・検証など、ねぶたに関する研究に取り組んできた。ホームページで運行団体を紹介するのも活動の一つ。そして、8月の祭り本番は、学生らも参加し、青森の夏を満喫している。

 新型コロナはこうした研究の場も奪ったが、学生の探究心が尽きることはなかった。佐々木教授は有志らと共に、ねぶた師支援のCFを立ち上げたことから、学生たちはCFと連動する形で、ねぶた師本人から話を聞くことにした。

 学生たちは6月上旬から約3週間かけ、手分けしてねぶた師を訪問。ねぶた師はそれぞれCFへの謝意を示すとともに、祭りのない夏と向き合う心情などを真摯(しんし)に語った。

 撮り終えた映像は学生が自ら編集し、動画投稿サイト「ユーチューブ」にアップ。三上さんは「10〜20年後、今年がいろいろな意味で貴重だと感じることになる。新しい挑戦や、ねぶたに対するねぶた師の愛を再確認することができた」、野呂さんは「CFという新たな形でねぶたの現状を知り、支援することができて誇りに思う」とそれぞれ充実した表情を見せた。

 佐々木教授によると、多くのねぶた師に学生がインタビューしたのは今回が初めて。例年この時期は、大型ねぶた制作が佳境を迎え、時間がとれないからだ。佐々木教授は「今年はまさに特別な夏。ねぶた師がどのようなことを考えているのか、具体的な声を聞くことができた。学生たちの研究にプラスになることは間違いない」と意義を語った。