藪から棒で恐縮だが、テレビのドキュメンタリー番組やノンフィクション系の番組を制作するうえで、番組制作会社にとって今いちばん難しいことは何か、ご存じだろうか。あえて言わせてもらえば、多分それは「黒字を出すこと」だ。

「テレビ離れ」が叫ばれる中、テレビ局の売り上げは減少の一途。そこにコロナ禍の影響も加わり、あらゆる番組の制作予算は減り続けている。ドキュメンタリー・ノンフィクション系の枠もどんどん消滅していく一方だ。しかし、それとはまた別次元で現場の制作者たちを苦しめている問題がある。

少し乱暴だが、一言でそれを表すとすれば「追撮地獄」という言葉が最適なのではなかろうか。

取材・撮影をして、大まかに編集したVTRを局のプロデューサーにプレビュー(試写)してもらったところから地獄が始まる。何度も何度もやり直しを指示されて、いつまでたっても納品できないのだ。

追加で撮影をやり直し、編集をやり直し、プレビューをやり直し、それでもOKが出ない。いくらやり直しても通常は追加で費用がもらえることはないから、次第に制作予算を使い果たし、赤字になってしまう。これが「追撮地獄」だ。

さまざまなテレビのプロたちはどんな仕事をしているのか、そしてどんな問題に今直面しているのかを取材して「現場の声」をお届けしている連載「テレビのミカタ」。今回は「ドキュメンタリーD(ディレクター)」ということで、ノンフィクション系の番組の制作にあたっているテレビマンたちの証言をご紹介する。

某キャスターが巻き起こす「追撮地獄」

前編では彼らの「待遇」についてお伝えしたが、後編は「制作環境」。「追撮地獄」をはじめとして、ドキュメンタリー制作者たちがどのような問題を抱えて苦しんでいるのかを知っていただきたいと思う。

「『ねえどうしてこういうシーンがないの?普通撮ってくるでしょう?』という言い方を毎回されるのがトラウマになりそうです。そもそも打ち合わせをしてから取材を始めているわけですし、絶対に必要な場面を撮影していなければ、それはこちらが悪いです。

でも、あってもなくてもいいような場面を撮影しなかったからといって、『普通撮ってくるでしょう?』と、なんだか僕たちに常識がないみたいな言い方をされるのはおかしいと思います。『そのシーンが必要だと思うのはあなたの感覚ですよね?』と言い返したくなりますが、当然そんなことはできないので、追加で撮影に行くしかありません」