「週末の疲れた心と身体を癒やすには、やっぱりお酒!」と考える方には残念な情報かもしれません。なんと近年の研究で、「アルコールを常習するとイヤな記憶を消す能力が下がる」ことがわかりました。では、私たちが普段お酒を飲むときに感じる「なんとなく楽しい気持ち」は何だったのか? 科学的見地から見た飲酒の正しいメリットとデメリットを、明治大学法学部教授の堀田秀吾氏による新刊『図解ストレス解消大全』から一部抜粋・再構成してお届けします。

仕事のあとに飲むビールが好き、という方は多いと思います。自分へのご褒美もかねてグビグビと飲めば、何とも言えない多幸感に包まれ、気持ちが落ち着くものです。

古来から「酒は百薬の長」と呼ばれるように、先人たちもお酒の有効性を肌身に感じていたのでしょう。なんでもこの言葉は、紀元前3世紀末頃の漢書に登場し、『塩は食べ物のなかで最も重要。酒はどんな薬より効果がある上に宴会には欠かせない。鉄は農業に必要なものの基本』と書かれていたとか。古今東西、お酒の魅力は変わらないのでしょう。

「やけ酒」こそストレスの原因

「酒は百薬の長」。だからこそ、イヤなことがあったり、むしゃくしゃしているときにお酒を飲むことで、ストレスを解消したくなる――という人は多いのではないでしょうか?

ところが、東京大学大学院の松木則夫・野村洋の研究では、「やけ酒をするとイヤな記憶や気持ちがかえって強くなる」ことが判明しています。お酒を飲むと楽しくなって気持ちもふわふわしてきますが、飲み続けるとそうとは限らないのです。

研究では、ネズミに電気ショックを与えたあと、アルコールを注射し、どういう行動になるかを調べました。すると、ネズミは電気ショックのことを忘れるどころか、電気ショックの恐怖を強め、臆病になってしまった……つまりイヤな記憶が強化されてしまったのです。

さらにアメリカ国立衛生研究所のホームズらの研究結果によると、「アルコールを常習するとイヤな記憶を消す能力が下がる」ことが報告されています。先の研究と合わせると、お酒を飲んで楽しくなったとしても、実際にはイヤな記憶が強化され、消却することが困難になるだけというわけです。

「イヤなことがあったから今日はとことん飲んで楽しくなってやろう!」「付き合っていた人と別れてショックから立ち直れない……お酒を飲んで気を紛らわせよう」。そう心に誓ったところで、脳は正直です。飲んでいる最中は楽しくなれるかもしれませんが、お酒に頼りすぎると、かえってイヤなことや忘れたいことをズルズルと引きずる体質になってしまう可能性が高まるのです。