人生100年時代を迎え、価値観の多様化も進み、社会の構造がますます複雑化していくことが予想されます。これからの子供たちがそんな世の中に対応していくためには、「考える力」がますます必要になってくるでしょう。

実は、その力を伸ばすカギは、「記憶力」にあります。子供の頭を良くし、その子の人間力や、非認知能力、EQ(心の知能指数)までをも高めるための近道が記憶力を鍛えることなのです。ロンドンで開催された世界記憶力選手権での経験を基に「記憶」の根本からひもとく脳育の入門書『子供の成功は記憶力で決まる 学力、思考力、心を育む子育て』から一部を抜粋・再構成して紹介します。

知識ゼロでは「思考力」は育たない

皆さんは「頭がいい人」と言われてどんなタイプの人物を想像しますか。

なんでもものごとを知っている博識な人でしょうか?

それともアイデアが豊富な人?

学校の成績が良い人?

話が上手な人?

論理的思考に長けている人?

おそらく、それぞれにいろいろな頭の良さという定義のイメージをお持ちだと思います。そして皆さんが想像した能力は確かに「頭がいい」ということになるのでしょう。ひとくちに「頭がいい」と言ってもさまざまな角度からの視点があるので、これこそが頭の良さだというふうにひとつに絞ることは難しいでしょう。

しかし、一見別々に思えるこれらの能力にも共通している点があります。それはどの能力もすべて脳で行われているということです。そして頭を使うという点に注目すれば、それは「認知能力」という機能でくくることができます。この認知能力を土台として支えている力が「記憶力」なのです。

物知りや学校の成績といわれればなんとなくわからなくもないけれど、アイデアを生み出すことや論理的に考えることに記憶力がどう関わってくるのか? は、なかなかイメージしづらいところではないでしょうか。ですが、実はこれらの能力も、それらを土台で支えている記憶力がなければ成り立ちません。

記憶力というとどうしても丸暗記を連想してしまう方も多いことでしょう。人間の記憶力というものが覚えた形のままでしか取り出すことができないとすれば、確かにその能力には、ほとんど価値がないというのには私も賛成します。これからますます進化していくAIなどにその座を譲ればいいだけの話です。

しかし、人間の記憶力は単なるインプットにとどまることなく、他の認知能力にもことごとく動力を与える、エンジンのような役割を持っているのです。