コロナ禍における「マスク配布対応アプリ」の普及で世界的に有名になった台湾のIT大臣・唐鳳(オードリー・タン)氏。デジタル社会の最先端で生きる専門家と日本の高校生による対話が、2020年11月16日、オンラインで行われた。

「世界的なデジタル社会でどう生きていくか、高校生が何をすべきか」をテーマに熊本県立熊本高校と一般社団法人台湾留学サポートセンターが主催。九州7県の県立高校の高校生がオンラインでつながり、唐鳳氏と対話した。参加高は主催校の熊本高校に加え福岡・東筑高校、佐賀西高校、長崎西高校、宮崎西高校、大分上野丘高校、鹿児島・鶴丸高校で、各校の1〜2年生からそれぞれ3人が参加した。

デジタル社会で感じた疑問や考えを問う高校生に対し、真摯に答える唐鳳氏。対話はデジタル社会のあり方にとどまらず、これからの生き方や人生の指針にまで広がった。対話の中から、デジタル社会に関するものを中心に紹介する。

ITイコールデジタルではない

デジタル社会の中でITをどう使えばいいのか、人間活動のすべてをITに置き換えられるのかという率直な質問が出た。これに対し唐鳳氏は、「デジタルとITは違う」とし、その理由を述べることから対話を始めた。

――私は小学生の時に英語力がゼロのままアメリカに渡り、現地の学校でITデバイスを使って英語を教えてもらいました。ITを使えば知識を効率よく増やすことができる一方で、コミュニケーション能力は先生と話さなければ身につきませんでした。デジタルでは言葉や気持ちのキャッチボールは限定的になるのではと思っています(佐賀西高校)

まず、IT=(イコール)デジタルではありません。ITはパソコンとパソコン、機械と機械をつなげる方法のことです。一方で、デジタルは人と人とをつなげる方法です。デジタルがITの基盤の上に構築されているのは間違いありませんが、デジタル=ITではありません。このことを先にはっきりと申し上げます。

ITの限界は、機械と機械をつなげることしかできないことにあります。では、ITが作り出す、例えば今、私たちが利用しているビデオチャットの技術をどのように活用すれば、「われわれは同じ空間にいる」といった感覚を誰もが感じることができるのか。これこそ、デジタルの応用における技術であって、どんなITを用いても決定できるものではないのです。というのも、これは私が一緒に決めていく空間であり、作り出していく空間だからです。

同じ空間にいながら、異なる場所から、異なる文化、異なる価値観を持った人たちが共通の物事に取り組んでいくことができないか。いわば、共同創作ができる状況を作り出すことこそ、人であるわれわれ自らがやるべきことだと思います。このような状況については、事前にITが解決したり求めたりしていくことはできません。コミュニケーションを絶えず繰り返すことで達成できるものなのです。より良いITはコミュニケーションの輪をさらに多くの人々に広げることはできますが、最終的には人々が時間をかけていくことが大事です。