人生に「ストレス」はつきもの。できることなら「ストレスはないほうがいい」と思う人も多いでしょうが、ストレスは心や体の不調を示すアラームの役割を担っています。では、もしストレスを我慢や放置してしまうと人はどうなってしまうのか? 福島県立医科大学医学部の大平哲也疫学講座主任教授による新書『感情を“毒”にしないコツ』から一部抜粋・再構成してお届けします。

落ち込んでいるときや疲れているとき、風邪を引きやすいことを実感している人も多いのではないでしょうか。「そういうときは免疫力が落ちているからだ」といってしまえばそれまでですが、実はそれを実証したアメリカの実験があります。

18〜54歳の健康な男女334人を対象として、ポジティブな気持ちをスコア化したうえで、全員の鼻に風邪のウイルス(ライノウイルス)をたらし、その後の風邪の発症状況を見たのです。

ポジティブな人ほど「風邪をひかない」

その結果、ポジティブな気持ちが少ない人に比べて、ポジティブな気持ちが多い人ほどその後風邪になる頻度が少ないことがわかりました(Cohen S, et al. Psychosom Med,2003)。

さらに、インフルエンザウイルスを用いた実験でも、同様の結果が得られました。ちなみに、この研究では、参加してくれたボランティアに対して1人あたり800ドル支払ったそうです。この金額をもらったら、読者のみなさんなら喜んで実験に参加しますか?

話を戻しますが、以上のことから、気持ちが前向きな人、ポジティブな気持ちを持っている人が、免疫力を上げて風邪を予防するといわれているのは確かだということがわかりました。

こういうケースは、私たちの日常生活でもよくあります。例えば、仕事が順調なときには風邪を引かないのに、仕事でミスをしたときに風邪をひいてしまったり、熱が出たりすることがあります。疲れが関係しているケースでは、普段は元気なのに、年末になると寝込んでしまったり、お子さんを産んで職場復帰をしたお母さんが、平日は仕事と子育てと家事をバリバリやっているのになぜか週末になると寝込んでしまうといったこともあります。

したがって、ある程度緊張感を持ってその状態を持続させることも、免疫力を上げるといえます。逆にいうと、気持ちが緩んだときに免疫力が下がって、病気になりやすくなるということです。