2020年初週の為替市場では中東リスクを受けた円高がにわかに注目を集めた。ここで、最近よく言われる仮説を思い返したい。「今やキャリー取引の調達通貨としては、円でなくユーロが選択されるようになっており、その結果、リスク回避時の買い戻しも円よりもユーロに集まりやすくなっている。だから円高になりにくくなっている」というものだ。

こうした仮説は危機時にもたいして動かない円相場の説明として昨年来、一部で注目を集めてきた。今回の中東リスクの高まりを受けた相場変動はこの仮説を検証する良い機会だったように思われる。結論から言えば、確かに今回の中東リスクを受けてユーロは対ドルで上昇する場面が見られた。しかし、円ほどの迫力は見られなかったという印象が残った。

上昇率は円のほうが高かった

厳密に言えば、イランの対米攻撃が報じられたのは8日の午前8時25分前後だった。例えばロイターは午前8時25分に「イラク国内で爆発音」とのヘッドラインを流している。その後、詳細が徐々に明らかになる中、そこから約1時間はリスク回避ムードが継続した。

その間の円とユーロの動きを追うと、ユーロは報道前の最安値から1時間の内に対ドルで最大、約0.2%上昇した(1.115程度から1.117程度)。かたや、円は最大、約0.7%上昇した(108.50円程度から107.70円程度)。

調達通貨としてユーロが円よりも支配的な地位にあるのであれば、今回のリスクオフムードの高まりと共に買い戻され、ユーロも円と同程度の上昇が見込めたのではないかと思われるが、今回は円相場の騰勢の方が目立った格好である。