今から25年ほど前、廃線になった鉄道を訪ねることがブームになった。そのきっかけとなった本は『鉄道廃線跡を歩く』(JTBキャンブックス)。1995年に発行されると、鉄道分野の書籍としては異例の人気となり、シリーズ化が決定。続刊が2003年までに10巻発行された。「鉄道廃線跡」という着眼はどこから来たのか、ブームの実態はどのようなものだったのか、同書を生み出した編集者・大野雅弘さんに話を聞いた。

出版のきっかけは「好きだから」

――『鉄道廃線跡を歩く』はどこから思いついた企画だったのですか。編集会議で企画は問題なく通ったのですか。

「そんな本が売れるのか」、「だれが買うのか」と訝しがられ、反対された。鉄道ファンというのは、車両など生きている鉄道に興味があるのではないか、と。そこをなんとか説得して、発行の承認を得た。

この企画を立てたのは、自分が鉄道趣味の1つとして、廃線跡にもよく行っていたからだった。もともと、SLが現役だった頃は車両の撮り鉄だったが、大学卒業前に最後の夕張線が蒸気機関車の通常運行を終了したのを機に、私もちょうど当時の日本交通公社に就職して大阪の支店勤務になったため、鉄道から離れていた。しかし、東京の出版事業局に転勤すると80〜90年代に姿を消しつつあった電気機関車EF58のとりこになって鉄道趣味が復活し、その後も旧型客車などの写真を撮りに行く流れで、また廃線跡にも足を向けるようになった。

――発売後の反響は?

発売前から問い合せが多数入って、書店からの注文が殺到した。それまで類書があったわけではないが、書店は「これは売れそうだ」というような感覚があったのだろう。発売前に既に2刷が決まった。結果的に、1巻目は12刷までいった。

鉄道ファンの中でも、鉄道史や保存車両などに興味のある人が動くことは予想していたが、それだけ売れたのは、一般の人がかなり買ってくれたからだろう。歴史に興味のある人、廃線になった鉄道にかつて乗っていた沿線住民、山歩き、ウォーキングするのに何らかの目的を探していた人など。それが、後の廃墟ブームにもつながっているのだと思う。