新宿から山手線の内側を横断する形で東京へと走る中央線。山手線の内側に敷かれた地上の鉄道は、路面電車や短区間の私鉄を除けば、なぜかこの中央線だけである。背景には歴史的、地形的理由がある。

短区間で変化に富む車窓

沿線の車窓は、その地形のおかげで変化に富んでいる。四ツ谷駅付近で突然現れるトンネル、桜並木が続く市ケ谷駅付近の外濠、急カーブのせいで電車とホームの間が恐ろしいほどあいている飯田橋駅ホーム、深い渓谷の中にある御茶ノ水駅ホームなど……。

この区間の地形の最大の特徴は、江戸時代、徳川幕府によって大きく改造されていることである。極端にいえば、江戸の町造りとしての大土木工事が行われていなければ、山手線内唯一の鉄道である中央線は、建設できなかったかもしれないのである。

まずは都心付近の中央線の歴史を押さえておこう。第1のポイントは、甲武鉄道という私鉄会社による開業ということである。東海道本線が官営鉄道なのに対し、中央線や山手線(品川―新宿―田端)は、私鉄会社によるものだった。