2020年初めは1バレル60ドル台だった原油先物価格(WTI)は急落し、現在は20ドル台で推移している。

急落のきっかけは3月5〜6日に開かれたOPEC(石油輸出国機構)とロシアなどの産油国を含めたOPECプラスの会合だった。ここでの話し合いがまとまらず、原油価格を下支えしていた協調減産は2020年3月に終了する。

さらにOPECプラスの後、協調減産を進めてきたサウジアラビアが一転して増産を表明。原油価急落の背景にはアメリカ、ロシア、サウジといった各産油国の思惑が見え隠れする。

原油価格急落の原因と今後の展開について、日本エネルギー経済研究所の小山堅首席研究員に話を聞いた。


 ――原油価格が1バレル20ドル台で推移しています。日本にとっての影響をどう考えますか。

原油価格が下がると連動して値が決まる天然ガスも下がる。つまり、ガソリン代や電気代、ガス代が下がるため消費者にとっては喜ばしいことかもしれない。

しかし、産油国による価格戦争という側面があるにせよ、世界経済減速が原油価格の下押し要因となっていることを考えれば、単純に喜ばしいものだといえない。(価格の低迷が)長期化すれば石油収入に依存する産油国の経済が不安定化する。長い目で見た石油安定供給に影響が及ぶ可能性も考えられる。

――なぜOPECプラスの協議が不調に終わってしまったのでしょうか。

2019年の後半から需給環境が緩み、供給過剰だとマーケットは認識していた。世界景気が減速する一方で、アメリカのシェールオイルの増産が進んでいたからだ。そのため、OPECプラスは2020年1月から日量170万バレルの減産強化で合意していた。その矢先に新型コロナウイルスによる経済減速が始まった。そこで、減産幅をさらに日量150万バレル拡大しようということで、OPECはロシア側に提案した。

ロシアはアメリカを意識した

だが、ロシアはこれを蹴ってしまった。OPECプラスが減産を決め、原油価格を下支えすることになれば、アメリカのシェールオイル生産を利することになる。両国の関係は非常に難しい状況で、アメリカの経済制裁がロシアを追い詰めている。アメリカのシェールオイル企業を利するような行動はロシアとしては看過できない。

ロシアの2020年の財政均衡価格(国の財政収支が均衡する原油の価格)は1バレル40ドル程度でサウジよりも耐性がある。仮にOPEC側が提案する減産幅が日量170万バレルのままであれば、ロシアも飲んだかもしれない。

――これまで協調減産を進めてきたサウジが増産に転じました。この豹変をどのように見ていますか。

サウジアラビアは協調減産が必要だという認識を産油国で共有することが必要だと考えたのだろう。そのためには同じ苦しみを共有する必要があるということだ。こうした行動は過去にもある。おそらく今回が4回目となるはずだ。過去3回はいずれも、(サウジの行動によって)協調減産体制の構築につながった。