4月8日午前0時、76日間にわたって続いた中国・武漢の都市封鎖が終わった。新型コロナウイルスの集団感染が世界で最初に始まったのが武漢である。感染爆発を全土に広げるのを防ぐため、中国政府は春節(旧正月)の長期休暇入り直前の1月23日に武漢から市外への交通を遮断。常住人口が1100万人におよぶ大都市を封鎖するという史上空前の決定だった。

武漢以外でも市民の外出制限、飲食店や映画館などの営業制限など、中国政府は経済活動を犠牲にして感染防止のための非常手段を連発した。習近平国家主席は、全国民に耐乏生活を強いる新型コロナ対策を「人民戦争」と表現している。すでに感染拡大は抑え込み、これからは早急に経済を本格的に回復させる――。武漢の封鎖解除は、「人民戦争」に対する勝利アピールの総仕上げとなるはずだ。

武漢の封鎖解除で「世界の工場」再稼働

武漢は中国中部の核となる都市であり、自動車、電機など重要産業の基盤が分厚い。とくに光通信分野での製造では世界的な中心地で、「オプティカル・バレー(光谷)」を自称するほどだ。

4月5日の武漢市政府の発表によれば、市内の大企業の97%はすでに操業を再開している。ホンダの現地生産拠点である東風本田や、中国有数の鉄鋼メーカーである武漢鋼鉄などはフル操業中とのふれ込みだ。ただ、市外からの資材の供給がない中で、操業レベルには企業によりかなりばらつきがあるはずだ。武漢が世界のサプライチェーンとつながってこそ、「世界の工場」である中国の正常化への道が開ける。

中国経済の足元の状況は惨たんたるもので、4月17日に発表される1〜3月期のGDP(国内総生産)は前年同期比10%前後の大幅なマイナス成長になるとみられる。もともと昨年の6.1%成長にはとどかないとみられていたが、新型コロナで大幅な低下が見込まれる。ここから年後半にかけてのV字回復への道筋をどう描くか、中国政府の力量が問われるところだ。

注目点は今年の経済成長率の目標である。3月中旬に発表された1〜2月の経済統計は軒並み史上最悪の数字で、消費動向を示す「社会消費品小売総額」が前年同期比20.5%減、固定資産投資が同24.5%減、輸出が同17.2%減となった。

しかし発表会見で国家統計局のスポークスマンは「今年の目標を達成する自信は変わらない」と述べた。中国共産党は公約である「小康社会(ややゆとりある社会)」実現のため、2020年にはGDPを2010年の2倍にする目標を掲げており、その達成には今年の成長率を5.6%以上にする必要がある。つまり国家統計局は「今年の成長率目標は5.6%を超える」と示唆したことになる。