「ねぇ、俺の昼ご飯まだ?」――。その瞬間、リビングに緊張が走った。

新型コロナウイルスの影響で、いち早く子どもの学校が休みとなった。緊急事態宣言が発令されてからは、頼みの綱であった学童・保育園も休園となり、夫は在宅勤務を命じられ1日中家にいるようになった。

増える家事、育児、自らの仕事……。そのすべてのしわ寄せを受けているのは、妻である。三足のわらじを24時間履き続ける毎日のなかで、今にも爆発しそうな不安と不満を抱えている。夫はそんな様子を気に留めることなく、自らの昼食を注文する始末である。

ある家庭の一端を紹介したが、こうした状況は、日本中の多くの家庭で起きていることだろう。それぞれに不安を抱えた家族が密閉空間に押し込められている環境下で起きている「わが家の緊急事態宣言」の全貌と対処法について解説する。

世界が終わる前に家庭が終わる

ニューヨークやロンドン、パリなど世界では、ロックダウン(都市封鎖)が行われている。そこで起きているのは、DV(ドメスティック・バイオレンス)の増加である。この点については国連やWHOも警鐘を鳴らす事態にまで進展している。

その原因は、それぞれに不安を抱えた家族が、逃げ場のない空間に押し込められていることにある。「新型コロナウイルスの影響はいつまで続くのか」「給与が減ることで生活はどうなるのか」「学校がいつ始まるのか」という見通しの立たない不安が、心配を増幅させる。そして、ささくれ立った心のはけ口として、家族に暴力性が向かってしまっているという。

いまだかつてない緊張状態のなかで、心穏やかに暮らすことは容易ではない。誰しもが「こんなときこそ家族だんらんを楽しみたい」と思っているものの、ささいなことでもイライラが先行してしまう。普段であれば聞き逃せるようなちょっとしたことに過剰に反応し、言い争いに発展する。それぞれが自己嫌悪に陥り、さらに気が滅入っていく。

こうした現象は、特定の家庭で起きるわけでない。今日、明日に、自分の家庭で起きてもおかしくないし、実際に起きているかもしれない。このような新型コロナウイルスを取り巻く環境下で、社会や経済という側面だけではなく、家庭においてもいわゆる「withコロナ」の時代を生き抜くことが求められている。