新型コロナウイルスについては、すでに海外からも科学論文が出され始めているが、その本当の恐ろしさをいまだに理解していない人たちがいる。新型コロナが怖い理由の1つは、肺炎の重症化のスピードが非常に速いことだ。

新型コロナの肺炎が悪化すると、浮腫が起きて肺胞膜が厚くなり酸素交換能力が急速に落ちてしまう。そのため呼吸をしても血中酸素濃度が上がらず、酸素吸入でもダメな場合は人工呼吸器が必要になる。人工呼吸器では酸素濃度は最大100%(空気中は21%)まで上げられるが、これは肺障害を引き起こすため長時間は危険である。

避難所の風景は関東大震災から変わっていない

酸素濃度100%でも血中酸素濃度が上昇しない場合は、人工心肺装置である体外式膜型酸素投与(ECMO)が行われる。ECMOでは、細い管を通して酸素交換を行うため、長時間利用する場合は、その細い管の中で血栓ができないようにするための血液をサラサラにする薬が必要だ。

また新型コロナウイルスの肺炎では、末梢血管に血栓が生じやすく、肺塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)になることも少なくないことからECMOのためだけでなく肺塞栓症予防のためにも抗凝固療法が必要になる。この副作用から出血しやすくなるため、出血による合併症(脳出血、消化管出血、気道出血など)で死亡することも少なくない。

新型コロナによる肺炎は重要化すると救命が困難なのはこれでわかってもらえるだろうか。つまり、新型コロナの死亡者を減らすには、感染予防が何より重要だ。こうした中で災害が起きて、避難所での暮らしを余儀なくされる場合を考えてみると、恐ろしい現実が見えてくる。そこで今回は、感染症予防の観点から、日本の避難所における問題点をいくつか指摘したい。

1つは、日本の避難所では、簡易ベッドが被災者全員に必要だとは考えられていない点だ。テレビでよく見かける通り、避難所といえば体育館などの床に布団を敷く「雑魚寝」をよく見るが、この光景は100年前の関東大震災から変わっていない。

筆者は血管内治療外科を専門としており、新潟県中越地震後に車中泊によるエコノミークラス症候群で多くの人が亡くなったことを受けて、災害後のエコノミークラス症候群予防活動を行ってきた。