スマートフォン関連製品の製造・販売を行うトリニティが4月27日に発表した「原価マスク」は、事業利益を一切乗せずに流通させた使い捨てマスクだ。1枚あたり39円、50枚の1梱包あたりでは2176円の価格設定は、ほとんどの使い捨てマスクが50枚入りで3000円を超えていた中で注目を集めた。

“原価”という極めて注目を集めやすい言葉を使ったことも、話題となった背景にはあるのだろう。“原価マスク”はツイッターのトレンドワードになり、現在もネットで検索をすると通販サイトでさまざまな商品がヒットする(原価マスクを検索キーワードに設定している)。

この話だけであれば、注目を集めやすい言葉を使うことで人気を集めようとしただけではないかと疑われるところだろう。利益を取らずに中国生産のマスクを日本に届けるという取り組みは、ソフトバンクも中国の自動車メーカーBYDとの協業で進めることを表明している。アイリスオーヤマをはじめ、国内のさまざまな製造業者がマスク増産を要請する政府に応えようとしている。

なぜマスクの輸入販売を始めたのか

マスクなどの衛生用品とは縁の薄いトリニティが、なぜマスクの輸入販売に乗り出したのか。社長の星川哲視氏に話を聞いてみると、グローバルでのマスク需要逼迫、中国政府による工場へのマスク生産体制支援、欧米でのマスク需要急増などを背景にした、材料の価格高騰、工場確保の難しさなどの問題が見えてきた。

日本での新型コロナウイルス流行が現在ほど進んでいない頃、中国は急速な感染拡大に苦慮していた。感染拡大を恐れた政府からは外出禁止令が出され、工場の操業も行えない状態だった。

そんな中、中国政府はクリーンルームを持つ工場に対してマスクを生産するならばという条件で操業開始を許可すると通達したという。もちろん、工場はマスク生産の設備を持っているわけではない。そこで、中国政府はマスク生産に必要な機械を購入する資金を援助した。