白人警官による黒人暴行死事件を端緒とした全米での抗議デモと暴動が収まらない。1960年代の公民権運動に匹敵する規模といわれ、英国など欧州へもデモが波及している。

きっかけとなった事件は5月25日に起こった。米中西部ミネソタ州ミネアポリスで偽札を使った疑いで逮捕された黒人のジョージ・フロイド氏(46)に対し、白人警官が首を膝で地面に押さえつけ、死亡させたものだ。フロイドさんが 「I can’t breathe(息ができない)」と訴える姿を居合わせた市民が撮影し、SNS(交流サイト)で拡散。瞬く間に全米各地での抗議デモにつながった。

一部のデモ隊が暴徒化し、店舗からの略奪や放火も発生。首都ワシントンやニューヨークなど多くの都市で一時、夜間外出禁止令が発令され、州兵も動員された。ドナルド・トランプ大統領は「略奪が始まれば銃撃も始まる」とツイッターに投稿、連邦軍動員の意向を示すなど強硬姿勢を鮮明にし、アメリカ社会の分断が深まっている。

こうしたデモ拡大の背景やトランプ氏の強硬姿勢の狙い、11月のアメリカ大統領選への影響などについて、アメリカ政治が専門の久保文明・東京大学教授に聞いた。

慢性的な事件頻発に黒人の怒りが爆発

――今回のデモ拡大の背景についてはどう見ていますか。

きっかけとなった事件は、映像がはっきりと残っており衝撃的なものだった。ただ、このような事件は初めてというわけではなく、例えば2014年にミズーリ州のファーガソンで発生した白人警官による黒人青年の射殺事件の際にも同様に黒人の抗議運動が起きた。かなりさかのぼれば、1992年の「ロサンゼルス暴動」も警官による黒人への暴行がきっかけだ。

つまり、こうした事件はアメリカで慢性的に頻発しており、いつになったら状況が変わるのか、という黒人たちの怒りとフラストレーションが爆発した形といえる。

特に最近はみなカメラ付きのスマホを持っており、暴行のシーンをリアルに録画してSNSに発信することが容易になった。過去の事件では、報道されないことや(警察側に)否定されることも多かったが、今回のように映像で世界に発信されれば説得力が高く、否定しようがなくなる。

また、今回事件が発生したミネソタ州ミネアポリスやミズーリ州ファーガソンなどは、黒人住民の数が増えている割には黒人警官の数が少ない。黒人住民の多いワシントンDCなどはアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)のような配慮で黒人の警官も多いが、そうではなく人種的なアンバランスがあると事件が起きやすいという側面がある。