11月のアメリカ大統領選で、トランプ大統領の再選は厳しくなってきているとの見方が支配的だ。コロナ感染拡大、経済悪化、そして黒人暴行死問題の3つの危機に直面する中、主要な世論調査ではいずれも大統領の支持率が急落している。

ギャラップの最新世論調査(5月28日〜6月4日)では、大統領の支持率は5月上旬の調査から10ポイント減の39%にまで下落した。支持率が40%を下回るのは大統領の弾劾調査が始まった昨秋以来となる。またリアルクリアポリティックスの最新世論調査(6月1日〜23日)では、支持率の平均値でジョー・バイデン候補がトランプ大統領を10ポイントほどリード。直近ではニューヨークタイムズ紙・シエナ大学の最新世論調査(6月17日〜22日)で14ポイント差、保守系のFOXニュースの最新世論調査(6月13日〜16日)でも12ポイント差とバイデン氏がリードを広げている。

仮に今日、大統領選が行われた場合、バイデン氏の勝利はほぼ確実だ。トランプ選挙陣営はスタッフを入れ替えるなど劣勢挽回に必死だ。

バイデン優勢に3つの構造的な要因

バイデン氏に追い風が吹いている理由として、①トランプ大統領の信任投票と化していること、②政治の変革(チェンジ)機運が高まっていること、③第3党の有力候補がいないことの3つの構造的要因が挙げられる。

まず、1つめだが、コロナ危機と黒人暴行死問題への大統領の対応を国民の多くが評価していない。

NBCニュース・ウォールストリートジャーナル(WSJ)紙の世論調査(5月28日〜6月2日実施)によると、大統領のコロナ対策を有権者の43%が支持、55%が不支持と回答。またNPR・PBS・マリスト大学の世論調査(6月2〜3日実施)では、黒人暴行死問題に対するトランプ大統領の対応が人種対立を悪化させたと回答した有権者は67%にも上った。大統領選が仮にこれらの問題を問う選挙となれば、トランプの落選は確実だ。

2つめは「トランプ疲れ」とでもいうべき感情が広がり、「チェンジ」を求める人が増えていることだ。

近年はワシントン政治に国民が不満を抱き、選挙では変革を求める傾向が見られる。2000〜2018年の10回の選挙のうち8回は議会あるいは大統領の政党が入れ替わった。大統領選では2008年にオバマ大統領が「変革(チェンジ)」を掲げて当選した。2016年大統領選でもトランプ大統領は「ワシントンの沼地をさらう」と語り、ワシントン政治を長年担ってきたエスタブリッシュメントの打倒を掲げて当選した。

バージニア大学の調査によると、2016年大統領選でトランプに票を投じた有権者のうち20%は2008年と2012年の片方あるいは両方でオバマに投票したいわゆる「オバマ・トランプ投票者」だ。彼らはイデオロギーではなく、ワシントン経験が浅いアウトサイダーが既成政治を破壊することに期待を寄せていた。