これまでにないジャンルに根を張って、長年自営で生活している人や組織を経営している人がいる。「会社員ではない」彼ら彼女らはどのように生計を立てているのか。自分で敷いたレールの上にあるマネタイズ方法が知りたい。特殊分野で自営を続けるライター・村田らむが神髄を紡ぐ連載の第80回。

認知症の人たちの日常生活を描いた『消えていく家族の顔 〜現役ヘルパーが描く認知症患者の生活〜』(竹書房)という漫画を読んだ。同じテーマの作品は過去にもあったが、この漫画が珍しいのは

“介護される認知症当事者”

が主人公だということだ。

主人公たちは、家族の顔がわからなくなり自分を叱責する実の娘に怯えたり、買い物途中に脳の中から地図が消えて徘徊してしまったりと、トラブルを繰り返す。

今までの作品では

「介護をする人はいかに大変か」

が描かれることが多かったが、この作品では

「認知症当事者には世界がどのように見え、感じているのか」

が中心に描かれている。

もちろん認知症当事者に漫画制作はできないから、作者は想像で描いている。ただ、描写は非常にリアルだ。自宅で想像しただけではとても出せない説得力がある。

実は作者の吉田美紀子さんは、漫画家でありながら、現役のヘルパーとして働いている。仕事として日常的に認知症患者と触れ合うことで知り得た情報に基づいてこの漫画は描かれているのだ。

吉田さんはこれまでに介護ヘルパーをテーマにしたドキュメント漫画の単行本を2冊出版されている。リアルな介護の現場を描きつつも、優しいユーモラスな雰囲気が全体に漂っていて、読んでいてうつな気持ちにはならない。

吉田さんは、5年前に介護のドキュメント漫画を描くまでは、4コマ漫画雑誌などにフィクション漫画を描いていたという。

なぜ、吉田さんはヘルパーと漫画家という二足のわらじを履くようになったのか?

そこに至るまでの道のりを聞いた。

発達が遅く自分の世界にトリップする子だった

吉田さんは山形県で3人姉弟の末っ子として生まれた。実家は農業を営んでおり、小さい頃は祖父祖母に預けられていることが多かったという。

「ぼんやりした子どもでしたね。発達が遅い子だったので、周りに全然ついていけなかったんですよ。授業にもついていけなくて、先生の話を聞いているとどんどん自分の世界にトリップしてしまう子どもでした」

小さい頃から漫画が好きだった。姉の影響で『少女コミック』(小学館)や『りぼん』(集英社)の漫画をよく読んだ。

「姉は『ベルサイユのばら』の登場人物のようなキラキラした女性を描くのが得意だったので、ねだってよく描いてもらいました。姉が描いてくれないときは、おばあちゃんにねだって描いてもらいました。ねだりすぎたせいかみんななかなか描いてくれなくなって、それで仕方なく自分で描き始めました」