「投資の神様が久しぶりに動いた」――。7月5日、ウォーレン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイがドミニオン・エナジー社から天然ガスのパイプライン網を買収すると発表(97億ドル)、投資家に少なからぬ衝撃を与えた。8月30日で90歳を迎える大投資家は、今後の世界について考え方を変えたのだろうか。2014年以来、同社の株主総会に出席している独立系資産運用アドバイザーの尾藤峰男氏(今年はオンラインで参加)が、5月の総会でのバフェットの発言を引き合いに出しながら、バフェットの考え方を読み解く(文中敬称略)。

新型コロナで大失敗した投資の神様

時計の針を、いったん約2カ月前に戻そう。今年もバフェット率いるバークシャー・ハサウェイの株主総会が、彼の本拠地である米ネブラスカ州オマハで5月2日に開催されたのは記憶に新しい。

今年はとにかく異例づくめだった。ひな壇には、バフェットと非保険事業を統括する副会長のグレッグ・アベルの2人だけ。いつもバフェットと一緒に出席する60年来のパートナー、チャーリー・マンガーは、ロサンゼルス在住。空の旅を避けるため、今回は欠席(ちなみに至って健康だ)。1万8000人がぎっしり入るアリーナも空っぽ。ただひな壇に座る2人を映すカメラが前にあるだけだった。

「あのバフェットが航空会社の株で大損をしたらしい」――。すでにそうした報道もあり、世界の投資家たちは「投資の神様」が新型コロナウイルスで世界の株式市場が大きく揺れた第1四半期(2020年1月〜3月)にどういう投資行動をとったか、直接聞きたかったはずだ。

そして明らかになったのは「ほとんど何も買っておらず、大量に保有していたエアライン株は全部損を出して、売ってしまった」という事実だった。「やっぱりそうだったのか――」。世界の投資コミュニティは驚いた。また、ニューヨークダウが、今年の高値から一時38%以上も下がったにもかかわらず、17億ドルの自己株買いを行っただけで、あとは特に買っていなかった。その背景には、何があったのだろうか。彼の発言も引用しつつ、今後を読み解いてみよう。

まず、なぜアメリカの主要4社のエアライン株を、全部損切りして売ってしまったのか。