東京は、アジアの金融センターとして香港になり代わることができるのか。香港において国家安全維持法が施行され、それに反発するデモと治安当局との衝突が起きる中で、現地の金融コミュニティは、安全に不安を抱くようになっている。こうした中、安倍晋三首相は、日本が香港に取って代わるという発想を温めている。

安倍首相は6月12日の国会で、「香港から来る人も含め、専門的かつ技術的に優れた能力を持つ外国人を歓迎する」と発言。翌日には自民党が、ポストコロナ時代における日本経済の抱負として、東京を国際的な金融センターにするという計画を打ち出した。

構想はこれまでもあった

東京を金融センターにするという計画が持ち上がったのは今回が初めてではない。日本のベテランエコノミストであるイェスパー・コール氏は「私が1986年に来日したとき、当時の宮澤喜一大蔵相(当時)はすでに成長戦略の一環として金融業推進を掲げていた」と話す。

昨今の例をあげるならば、2014年には当時の舛添要一都知事が同じ目標を掲げて金融促進事業を開始しており、2016年には現都知事である小池百合子氏がこれにならった。さらに2019年には自由民主党が同様の事業を行ったが、これらの試みはことごとく失敗している。

コール氏は、「アブダビやシンガポールで起業するなら、管理職、会計士、マーケティング担当者、弁護士、全て英語話者で揃えることができる。東京の環境はそうなっていない」と語る。

世界第3位の規模の株式市場を有し、取引高の3分の2を外国人投資家が占める東京は、確かに一見すると傑出した金融センターであるかのように映り、世界の大手ファンドはどこも東京にオフィスを構えている。

元日銀政策委員会の審議委員である白井さゆり氏は、2017年のアジア開発銀行研究所の論文で、「日本の長所は、GDP世界第3位を誇る経済規模、米ドルとユーロに次ぐ第3の国際通貨という円の地位、そして豊富な資本を抱える巨大な金融市場だ。東京には、その地理を利用して、台頭しつつあるアジア市場に巨額の資本を投入する地域の金融センターになれる可能性がある」と述べている。