鉄道写真撮影において今も昔もいわゆる『撮り鉄』の撮影マナーやルールについて話題になることは多い。私たちプロ鉄道写真家はその模範となるべく日々十二分に気を付けて撮影をしている。だが振る舞いには気を付けていても、ちょっとした不注意によって撮影現場で痛い思いをすることもしばしば。今回は私が体験した“痛〜い”撮影秘話をお話ししたいと思う。

木曽路で焦って肉離れ

2010年11月中旬に某鉄道誌の取材で中央西線の383系特急「しなの」を撮るべく4日間ほど沿線を動いていたときだ。最終日についに残り2カットとなり、次の現場であった野尻―大桑間の踏切そばの撮影地でそれは起きた。もともとタイトなタイムスケジュールだったので、車が現場に着いてカメラを取り出したときになんと踏切が鳴り始めたのだ。「マズイ!」と思い、走った瞬間、まるで太い木の枝で猛烈に叩かれたような衝撃と激痛が左足のふくらはぎを襲った。

走るどころかまともに歩けない。経験したことのない痛みと状態にわけもわからず、とにかく左足を引きずるように必死に撮影地を目指した。列車の走行音が聞こえてきたときには、もう泣きそうである。だが天は見放さなかった。列車が通過する寸前でカメラを構えることができ、なんとかギリギリで撮影。さすがに残り1カ所の撮影は断念して帰路についたが、車を運転するにあたりアクセルやブレーキペダルを踏む右足でなかったことが唯一の救いだった。

後に病院で診てもらい肉離れだとわかったのだが、原因は寒い日で筋肉が固くなっていたにもかかわらず、いきなり走ろうと筋肉に急激な力を加えたからだそうだ。ちなみに情けないことに2012年の年の瀬にも反対の右足ふくらはぎの肉離れをやってしまった。

このときは忘年会に遅れそうになり急に走ったことが原因だった。目の前が診療所というなんとも都合のいいケガだったが、忘年会が楽しみだっただけに、すっかり以前の肉離れのことも忘れていた。このケガのせいで忘年会には参加できず、せっかくの正月休みも家で療養することになってしまった。「天災は忘れたころにやってくる」というが、せめてケガぐらいは忘れないようにしたいとNHKの「ゆく年くる年」を見ながら後悔したのを覚えている。