国内の感染者数が都市部を中心に全国的に増加し、メディアを見れば第2波、第3波という言葉が飛び交っている。この先どうなるのだろう。春先以来、ずっと不安が胸に巣くっているという人は少なくないだろう。

しかし病を引き起こすウイルスだけが人々の不安を醸成しているわけではない。7月に刊行された『コロナ危機の社会学 感染したのはウイルスか、不安か』では、政治とメディア、そして人々の意識がどのように相関し、不安を醸成していったのかが解き明かされている。同書の著者、東京工業大学准教授で社会学者の西田亮介さんに、コロナ禍を機に見えてきたメディアの問題について聞いた。

多すぎる情報が人々を不安にする

――『コロナ危機の社会学』では、新型コロナ感染拡大の対処において、政府が民意に「耳を傾けすぎている」という指摘がありました。

西田 亮介(以下、西田):はい、政府は1、2月あたりまで従来設けられていた新型インフルエンザ等特措法に基づく政府行動計画に沿って対処していたのですが、政府が計画から外れて裁量で対処するにつれてわかりやすい「民意」に迎合し、場当たり的な対策を繰り返すようになりました。

具体的には、マスクの配布や一律10万円の特別定額給付金などです。効果が判然としていないにもかかわらず、です。その背景には、各社世論調査で明らかになっているとおり、内閣支持率の低下があります。桜を見る会や検察官の定年延長などの問題がノイズのように重なって政治に対する不信感を引き起こした結果、政府はなりふり構わなくなっていきました。

一方でネットなどに表出する「民意」ですが、本当の情報と間違った情報が混じり合っていることから、正しさに起因していないところがあります。新型コロナ対策に関する情報については、WHOが早い段階からインフォデミック対策が重要だと呼びかけていました。インフォデミックとは、情報(information)と感染症拡大(epidemic/pandemic)を合わせた概念です。正確である、ないにかかわらず、新型コロナに関する情報量の多さそのものが人々を不安にするので、情報過剰性に対するリスク/クライシス・コミュニケーションが求められます。