製薬会社が大学医学部などの研究機関に提供している「奨学寄付金」。この寄付金が2017年度、71社から計約200億円に上っていた。探査報道を専門とするNGO「ワセダクロニクル」と、医師らがつくるNPO法人「医療ガバナンス研究所」が、独自に作成した最新版のデータベースによってわかった。

教育や研究を目的として提供される奨学寄付金は、かつて不正の温床だった。何に使うかを事前に契約で決めてから資金提供をする欧米の製薬会社と違い、日本独自の「悪習」といわれた。

処方を「買っていた」

国内製薬会社の元幹部はいう。

「ライバル社ではなく、自社の薬を使ってもらうため奨学寄付金を入れていた。『処方を変える』のではなく、『処方を買っていた』んです」

そんな奨学寄付金の負の側面が噴き出したのが、降圧剤ディオバンの効果と副作用を試す臨床試験でデータが改ざんされた事件だった。改ざんされたデータを元に書かれた論文は、京都府立医科大、名古屋大、慈恵医大、千葉大、滋賀医科大から発表された。5大学が外資系製薬大手のノバルティスファーマから受け取った奨学寄付金は、2003年〜2012年までで総額は11億3000万円に上る。

ノバルティスの元社員は2014年、東京地検特捜部に薬事法違反の疑いで逮捕され、刑事事件に発展した。

2015年から始まった公判では、京都府立大の教授が「論文はすべて(ノバルティスの)元社員からの指示で執筆した」と語り、論文への指示を出していたのとは別のノバルティスの社員は「年間寄付金を3000万円ほど出してもらえないか」と元教授から頼まれたことを明かした。

その後、製薬会社と大学の利益相反関係は大きな問題となり、製薬企業各社も寄付の支給を審査制にしたり、すべての資金提供を契約締結に基づく方法に切り替えたりしている。現役の製薬会社の営業担当者は「かつてのようなずさんな運用は難しくなった」という。

それでは規制が強化された後にもかかわらず、年間200億円もの寄付金がなぜ続き、そのお金は何に使われているのか。