昨年、イタリアの裁判所にてある重要な判決が下された。その論点はフェラーリ「250GTO」という皆が憧れるクラシックカーのレプリカの製造・販売が合法か否か、であった。

クルマには、その形状に関する意匠権や商標権をはじめとする複雑な権利が絡みあっているから、この判決ですべてがクリアになったわけではないが、その方向性に対する1つの指針が表明されたと言える。

かつては、小規模な工場がいろいろなレプリカカーや、その改造パーツ(キットカーとして)の販売などを行ってきたが、近年、これらに対する制約や圧力が強くなり、マーケットは著しく縮小した。

オリジナルのクルマを作るメーカーにとって、レプリカメーカーの存在は許しがたい。自分たちが本来得られるであろう収入を、横からかすめ取っていく存在だからだ。

近年では、メーカー自身がかつての名車のレプリカを製造し、正規に販売することもある。そこまでいかなくても、現行車種に過去の名車の持つモチーフや名称などを付けて、付加価値を生み出すことはトレンドでもある。ハードウェア的な性能が横並びとなった現在では、ブランドのヘリテージ(遺産)が差別化の重要な武器になる。

2014年に創業した新進気鋭のカロッツェリア

今回の判決を要約すると、EUの規定である「5年間以内にその商標を継続的に利用しない限り、その権利は無効になる」というルールが自動車にも適用されることを認めるものだ。

250GTOは1962〜1964年にかけて生産されたクルマで、今に至るまでその”レプリカ”を彼らは発売していないから、第三者たるレプリカメーカーがその商標を持つクルマを作ることは違法ではない、ということになる。

このフェラーリと法廷における戦いに挑んだのは、イタリア・モデナに本拠を置くアレス・デザインだ。2014年に設立されたこの会社は、自らを「現代の独立系コーチビルダー(=カロッツェリア)」であると表明している。

かつて、フェラーリやマセラティなど、モデナ近辺のスポーツカーメーカーは、デザインスタジオを自前では持たず、ピニンファリーナやベルトーネといったトリノに位置するカロッツェリアにスタイリングの開発を依頼していた。