各社各様の戦略を打ち出す動画配信事業者だが、国内勢にはネットフリックスと戦ううえで大きな壁が存在する。それは海外展開を行っていないことだ。ネットフリックスは全世界190カ国以上でサービスを展開しており、どの国で作った作品もシームレスに全世界1億9300万人以上いる会員に配信できる。

日本で製作の作品も基本、製作当初から世界で視聴されることを想定している。クリエーターや制作会社の「できるだけ多くの人に届けたい」という希望に添えるため、すぐれた作品を集めやすい。さらに、世界中で会員収入を得られるからこそ、作品作りにかけられる費用も圧倒的だ。

一部報道によれば、同社は2019年12月期、150億ドル(1兆5795億円)以上をオリジナル作品や番組購入に投じているとされる。対して日本の民放キー局の年間制作費(諸経費含む)は、合算しても約4000億円。ネットフリック単体の4分の1にとどまる。

こうした状況を踏まえれば、資本力を武器にオリジナル作品へ注力するという戦略は、実質的にネットフリックスのようなグローバルプレーヤーのみに開かれた道とも言える。日本国内だけで事業を営む動画配信サービスが別の戦略を推進するのは、ある意味必然の流れだ。

会員数開示で余裕を見せつけた

各社は競合との関係などを理由に会員数を公表していないが、各種調査情報などを総合すれば、ネットフリックスは今や日本の動画配信専業サービスで圧倒的なトップに立っているようだ。

例えばフールー(直近で発表している会員数は2019年3月時点の202.8万人)。運営会社・HJホールディングスの直近売上高(2020年3月期)は243億円と、前期比で38億円増加した。その前年の2019年3月期、売上高が前年比25億円の増加だったのに対し会員数が32万人の増加だったため、今年3月までの1年で増えた会員は40万〜50万人程度と試算できる。

同社は「日本ローンチ10周年(2021年9月)までに300万会員を目指す」(於保浩之社長)と宣言しているが、具体的な進捗は発表されていない。

豊富な作品数を売りに成長しているユーネクストも、「(会員数は)200万には達成しているはず」(競合配信サービス社員)。だが、いずれにしろ、ネットフリックスの500万には遠く及んでいないとみるのが妥当だ。唯一肩を並べるのは、動画配信だけではなく配送や音楽など様々なサービスを会員向けに一括提供するアマゾンくらいだろう。

こうした競合に対し、ネットフリックスは今回の発表で「動画配信専業でもここまでできる」という余裕を見せつけた格好だ。国内勢は今後ネットフリックスに突き放されないためにも、いっそう知恵を絞る必要がありそうだ。

著者:井上 昌也