次に閣僚人事についてみていこう。キーワードは「即応能力」と「バランス」である。

20人の閣僚のうち8人は留任、3人は横滑り、4人は再入閣であり、5人は初入閣である。

留任した閣僚や横滑り、再入閣の大臣はいずれもコロナ対策や菅首相が強調する政策に関係している。即応能力を期待され、留任となった、あるいは任命されたはずである。

何と言っても内閣の最重要課題は新型コロナウイルス感染症対策である。横滑りの加藤勝信官房長官、再入閣の田村憲久厚生労働相、留任した閣僚のうち西村康稔コロナ担当相、麻生太郎財務相、萩生田光一文部科学相、梶山弘志経済産業相は感染症対策に深く関わる。

加藤官房長官は安倍内閣のもとでは厚生労働相として感染症対策の最前線にいた。感染症対策には複数の省庁が関係する場合も多い。加藤氏は安倍内閣で副長官を務めており、内閣官房の業務に精通していることは確かである。さらに厚生労働相の経験を評価されて官房長官に起用されたはずである。

政策の継続性を重視した各閣僚の留任

加藤長官に替わって感染症対策を前面で担う田村厚労相は第2次安倍内閣で2012年12月から2014年9月まで厚労相を務め、即戦力である。 

西村コロナ担当大臣は厚労相とともに感染症対策を担ってきた。麻生財務相、梶山経産相は感染症の拡大による景気の失速に対する景気対策を立案してきた。萩生田文科相は一斉休校のかじ取りを行い、感染防止にも貢献するリモート教育の体制整備を推進してきた。菅首相は政策の継続性を重視して、各閣僚を留任させたと考えられる。

コロナ感染症対策以外に菅首相は行政のデジタル化、そのためのデジタル庁の創設と行政改革・規制改革を重視する意向を示している。

平井卓也デジタル改革担当相は自民党議員のなかで最も情報通信技術に精通していると考えられており、自然な人事である。河野太郎行政改革・規制改革担当大臣は自民党で行政改革推進本部長を務めたこともある。

菅首相が即応力、実務能力を重視したことは間違いないだろう。しかし、派閥間のバランスにも注意している。総裁選で戦った岸田派と石破派を含めて全派閥から閣僚を起用している。また、最大派閥の細田派から5人の閣僚を任命したように、派閥の規模に応じて閣僚ポストを割り振っている。さらに無派閥の大臣も3人任命している。

さらに役員人事も合わせて閣僚人事を見てみよう。今回、菅首相が自民党総裁選で勝利をおさめることができたのは細田派と麻生派、二階派から支持を得たことが大きい。そこでまず党役員人事で二階派の領袖の二階俊博幹事長、麻生派の領袖の麻生副総理・財務相が留任となった。

私は今、大人気のTBS日曜劇場「半沢直樹」の見すぎなのかもしれないが、こうした人事について、香川照之さん演じる大和田暁の象徴的なセリフである「恩返し」の要素を感じている。