さらにソフトバンクはショップを運営する代理店への評価制度を、ソフトバンクの大容量プランを多く獲得するほどインセンティブ(同社が代理店に払う報奨金)が多くなるように設計している。このようにして現場がワイモバイルの利用者をソフトバンクに乗り換えさせたい動機をつくっていることもアップグレードの推進に大いに寄与しているようだ。現在、ソフトバンクを扱う2300店のうち、8割弱の1800店がデュアルショップになっている。

KDDIが抱えていた制約

他方、KDDIの状況を見るとauショップとUQモバイルのデュアルショップは「今のところはほとんどない」(KDDI広報)という。

UQコミュニケーションズに対するKDDIの出資比率は32%だが、IFRS(国際会計基準)の適用で実質的に支配していると判定し、UQコミュニケーションズはKDDIの連結子会社となっている。ただ、子会社とはいえ別会社であるUQコミュニケーションズが運営するMVNOであるため、「MVNOの中でUQモバイルだけを特別扱いすることは難しい」(KDDI関係者)という事情があった。

MVNOは、自前の通信設備を持たない事業者が、いわゆるキャリアとよばれるドコモ、KDDI、ソフトバンクから有償で回線を借り受け、携帯電話事業を営んでいる。公共の電波を使って事業を営むキャリアは政府から、MVNOを営む各社に対して、公平な扱いをする義務を課されている。

例えばキャリアがMVNOに請求する、回線のレンタル料にあたる「接続料」も、キャリアが勝手に決めることはできない。総務省の基準に従い、MVNOを営む各社すべてに対し同水準にしなければならない。デュアルショップも、KDDIがこれまで本格的に展開していないのは「やらなかった」のではなく、公平性の問題から「やれなかった」のだ。

だがKDDIがUQモバイルも運営するようになる10月からは状況が変わる。統合後はUQモバイルはMVNOではなくなるため、auとUQモバイルの連携の足かせになっていた、「UQモバイルも他のMVNOも公平に扱う」制約がすべて消えるからだ。

通信業界に詳しいMM総研の横田英明常務は、「KDDIは、これからはソフトバンクとワイモバイルのようにauとUQモバイルのデュアルショップを本格的にやってくるのではないか」と話す。

ソフトバンクの発表によると2020年6月末の携帯電話の契約数は、ワイモバイルだけでなくソフトバンクも前年比でプラスだ(具体的な数字は非公表)。この増加傾向は最近、継続している。一方でKDDIの2020年6月末のauの携帯電話の契約者数は同2%弱減っており、減少傾向が続いている。

「パークの中(同じキャリアが運営するサービス)に利用者を留めることが非常に大事だ。ソフトバンクはデュアルショップを使ってメインブランドのソフトバンクにサブブランドのワイモバイルからのアップグレードをうまく取り込めていることもあり、ソフトバンクの契約数も伸ばせているのだろう」(横田氏)