近年、通信業界の主戦場はポイントや決済などに移ってきており、3月から商用化された5Gも背景に、動画などどんなコンテンツを提供するかも差別化ポイントになってきている。メインブランドとサブブランドで、そうしたサービスやポイントをある程度共通化させたうえで、デュアルショップを使って利用者の状況に応じメインブランドとサブブランドで相互送客を行う。ソフトバンクと同じ手法をKDDIが取る可能性は高そうだ。

2019年10月の改正電気通信事業法で通信契約を条件とする携帯電話端末の大幅値引きが禁じられたため、業界内では流動性が大きく下がり、MNP(他社への乗り換え)が減っている。外からの新たな獲得が難しくなっている中で「リテンション(囲い込み)を強め、他社に流出させない戦略の重要性はより高まっている」(横田氏)。

サブブランドを持たないドコモ

一方、業界1位のNTTドコモが運営するブランドはドコモのみで、吉澤和弘社長は「今後もサブブランドを持つ考えはない」と明言する。

ドコモの親会社のNTTの筆頭株主は政府(名義上は財務大臣)で、ドコモは民間企業とはいえ政府に近い位置にいる。その政府は通信料金の水準を下げるためにMVNO各社の奮闘を期待している。ドコモがサブブランドを持てば政府が推す「MVNO潰し」になるため立場上やりづらい、という面が背景の1つにありそうだ。

またキャリア3社のうち、ドコモは圧倒的に多くMVNOに回線の提供をしており、その接続料は同社の重要な収益源になっている。サブブランドを持たずにMVNOと共存するポジションにも一定の旨味がある。

KDDIのUQモバイル統合で苦しくなりそうなのはMVNO各社だ。格安スマホのカテゴリーで強力な競合相手であるUQモバイルは今後、KDDIの豊富な資金力をバックにキャンペーンや宣伝を強化してくる可能性が高い。また、MVNO各社がより劣勢になれば、ドコモはMVNOを営む各社からの接続料収入が低下する恐れがある。

KDDIが統合後にどのような手を打ち、それが業界にどのような波紋を引き起こすのか。多くの業界関係者がその先行きを、固唾をのんで見守っている。

著者:奥田 貫