これまでにないジャンルに根を張って、長年自営で生活している人や組織を経営している人がいる。「会社員ではない」彼ら彼女らはどのように生計を立てているのか。自分で敷いたレールの上にあるマネタイズ方法が知りたい。特殊分野で自営を続けるライター・村田らむが神髄を紡ぐ連載の第85回。

富士の樹海の中に村があり、宿もある

富士山北部に広がる原生林、青木ヶ原樹海。

皆さんは樹海の中に村があると聞いたら、どのような場所を想像するだろうか?

樹海は、一歩足を踏み入れると2度と出てこられなくなってしまう呪いの森……そんな恐ろしい印象を持っている人も少なくないだろう。清水崇監督の『樹海村』のようなおどろおどろしい村を想起してしまったかもしれない。

実は本当に樹海の中に村はある。ただし実際にはまったく怖い場所ではない。

航空写真を見ると、精進湖の南のあたりの139号線の道沿いにキチッとした長方形に整備された村を見つけることができる。

もちろん139号線から自動車で入ることができる。村内はアスファルト舗装の道路が通っており、70軒近い家が建っている。

はじめて来たときは、あまりに整然としていて、逆に驚いてしまった。

住所は、山梨県南都留郡富士河口湖町精進5丁目になる。古い住所だと、オウム真理教事件で注目された上九一色村にあたる。

現在では一般的には、『民宿村』と呼ばれている。理由はもちろん民宿が林立しているからだ。営業している民宿は、だいぶ減ってしまったというが、それでも現在10軒の民宿が営業を続けている。

実は筆者は何年も樹海を取材しているのだが、その際に民宿村の一軒『民宿丸慶』に宿泊した。

民宿丸慶の外観(筆者撮影)

「連泊で樹海を取材するなら、樹海の中にある民宿に泊まるのが効率がいいだろう」

と単純に考えただけだったのだが、その宿はとても居心地がよく、ご飯も非常においしく、また来ようと心に決めた。

そして今年の9月の頭に再訪した。

新型コロナが災いして客数は少なかったが、相変わらず居心地がよく、ご飯がおいしい民宿だった。

ただ変わったことと言えば、愛想のいい大人しい雰囲気の若旦那がYouTuberになっていたことだった。正直、驚いた。

その後10月末にみたび訪れ、若旦那のマサヲさんがどのような道を歩んで民宿丸慶の跡を継いだのか、そしてなぜYouTuberになったのかをうかがった。

その前に、まずはマサヲさんに不思議な場所『民宿村』の成り立ちから教えてもらった。