大学や研究機関など日本には数多くの研究者がいる。研究成果では世界で後れを取り始めたとされるが、夢の実現や社会の改革に向けて地道な努力を重ねる研究者は少なくない。そんな人々を紹介する「ニッポンのすごい研究者」。初回は早稲田大学理工学術院准教授の玉城絵美氏(36)。ベンチャー企業「H2L」創業者でもある玉城氏は、東京大学大学院博士課程在学時にコンピューター信号で人の手を自由に動かすことができる装置「ポゼストハンド」を開発し、アメリカ『TIME』誌の「世界の発明50」にも選ばれた。玉城氏が描く未来像とは――。

入院時の「外出できない」が原点

――どんなことがきっかけで、研究の道を志したのでしょうか。

高校生だった2001〜2002年頃、先天性の心臓病が悪化して入院することになったんです。とてもつらく大変だったけど、入院生活自体は上げ膳据え膳で楽だなと思いました。

ただ、部屋の外に出られないことが苦痛で……。同室の人たちも子どものイベントやお祭りに参加できないことを「そこだけはつらいね」と話していたんですね。

当時、音声と映像はやり取りできました。音声はマイクというインプット(入力装置)とスピーカーというアウトプット(出力装置)があり、映像はカメラとディスプレイがあったわけです。

でも、体の動きに関しては当時、ジェスチャー入力もジェスチャー出力もどちらもなかった。外部とインタラクション(相互に作用)できる機械が欲しいなと思って探したけれど、売ってない。だったら、自分が研究者になって、作って、企業と連携するか起業するかして、社会に広めていくしかないと思って、研究者になろうと進路を決めました。

――世に知られるきっかけとなったポゼストハンド。「操られる手」という意味を持つこの装置は、コンピューターからの信号によって人間の手を動かすことができます。この発想にどうやって行き着いたのでしょうか。

ジェスチャー入力に関しては修士課程の頃から研究を始めました。でも、ジェスチャー出力をコンピューターから表現する分野は未開拓で、本当に研究者がいなかった。

それには理由があります。回路設計やプログラミング、機械学習など複合的な知識が必要なので、作るのが大変で、ややこしいんですね。だから、手掛ける人がいなかったんだと思います。