そのやり取りを見ていて筆者が気づいたのは、配慮し合う経営陣の姿である。冒頭、津賀社長が説明する。

「私が主にお答えすることになりますが、質問によっては片山さんがお答えしますので」

若いジャーナリストは気づいていないかもしれないが、パナソニックの歴代トップをインタビューした経験がある筆者は、パナソニックのトップも変わったなという印象を受けた。まず、外部の人たちを前にして、「(弊社の)片山が」と言わず、「片山さんが」とさんづけで紹介している点である。また、質問が飛び出すと、これは「片山さんのほうがいいかな」と隣に目をやりお伺いを立てていた。外部からスカウトした片山氏だけでなく、生え抜きの楠見氏に対しても同じ姿勢だった。

この光景と真逆なのが、創業者が健在でCEOを務める、もしくはサラリーマン経営者(専門経営者)でもカリスマ型リーダーが存在する企業である。日本電産の永守重信氏、ファーストリテイリングの柳井正氏、ソフトバンクグループの孫正義氏などが登場する記者会見は、彼らの「独演会」である。創業者ではないが、創業家出身であるキヤノン会長兼CEOの御手洗冨士夫氏は記者会見中に事業部長が答え始めると、突然、マイクを取り上げ力説し始めた。創業者・創業家出身者でなくても、NECの(故)関本忠弘元会長は、社長交代の記者会見で、新社長が質問に答え始めると、「あの記者さんは、そんなことを聞いておられないんだ」と口を挟み、新社長を黙らせ関本氏が話し続けた。

うまく作用するか、阻害要因になるか

配慮し合うエグゼクティブたちの潜在心理が、パナソニックのコーポレートガバナンス(企業統治)の改革を左右する大きな因子になるのではないかと見た。この因子がうまく作用する場合もあるし、改革を断行するうえで阻害要因になるかもしれない。

中村氏は津賀氏の進まぬ改革を見て、新聞紙上で「津賀社長はもっと独裁者になるべきだ」と持論を展開した。経営者、政治家の別を問わずニコニコしている独裁者はあまり見かけない。中村氏もあまり笑わない人である。その厳しい表情や寡黙さから、人によっては、怖さを感じる。実際に対話してみると、人の話をよく聞く人で誤解されている節もあるが、存在感が増すにつれ、パナソニックの役員、従業員は緊張し、率直にものを言いづらくなっていたのではないだろうか。