いまは本社機能移転・地方移住という流れですが、これがコロナ後も続き、日本のビジネスと社会を一変させるかというと、なかなか微妙なところです。

企業は、本社機能移転という課題をどう捉えているのでしょうか。パソナやアミューズのような事例はまだまだ例外的で、大多数の企業は様子見をしている段階です。

「気持ちとしては是非ともやりたい。ネックになるのは、やはり従業員です。都市部に住み続けたいという従業員が多いので、移転によって優秀な従業員が退職してしまうのが心配です。また、あの会社は本社機能移転で人斬りをした、と言われるのは絶対に避けなくてはいけません。自ら動くわけにもいかず、移転するのが当たり前という世間の風潮になってくれないか、祈っています」(通信会社の役員)

カギを握るのは「国会と主要省庁の移転」

移転が当たり前になれば移転が増えるというのは、鶏と卵の関係。では、移転が当たり前という風潮になるかどうか、何がカギを握るのでしょうか。

それは、「国会・省庁など首都機能の移転」です。首都機能移転は、東京一極集中が問題になった1970年代から議論されるようになり、1992年には移転先候補地の選定体制などについて定めた「国会等の移転に関する法律」が制定されました。近年は、首都直下型地震のリスクから、首都機能移転の緊急性が高まっています。

にもかかわらず、首都機能移転は近年すっかり停滞しています。消費者庁は2016年から徳島県に移転する検討を進めてきましたが、「危機管理や国会対応が難しくなる」という理由で、全面移転を見送りました。

文化庁が京都市に移転する予定ですが(今年の予定でしたが、新庁舎の完成が遅れて来年になりました)、特許庁などはすでに移転を見送っており、中央省庁の全面移転は文化庁のみになりそうです。

ここで、菅首相が首都機能移転を表明し、国会と主要省庁の移転に着手すれば、企業・国民に「移転するのが当たり前」という強烈なメッセージを与え、事態は大きく動き出すでしょう。

では、最終的にどうなるのでしょうか。コロナの今後はなかなか見通せませんが、コロナ対策の失敗で支持率が低下した菅首相に国会議員と官庁の抵抗を押し切って首都機能移転を決断する政治力は残っていなさそう。

そもそも菅首相は都会の生活に心酔しており、地方住まいには関心がなさそう。という事情を考えると、本社機能移転はコロナ時代の一過性・部分的な動きに終わりそうです。

著者:日沖 健